「職人による手づくりだからこそできる、細やかな対応がうちの強み。他社では対応できないことにも積極的にチャレンジしています。この焼きモンブランの土台が、OEMの第1号なんですよ」

コンサル業で起業、資金がみるみる減少

小澤さんは最初からOEMをはじめようと考えていたわけではなかった。起業したのはスイーツのコンサル事業をおこなうためだった。

「前職で和素材を用いた商品の開発に携わるうち、日本各地にある素材の魅力と、それを生かしきれていない地域の実情を知りました。パティシエとして培ってきた知識と技術を生かし、素材の魅力を多くの人に届けたいと思ってスイーツのコンサル業をはじめたんです」

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多くのパティシエが抱く、自分のお店をもつという夢。小澤さんもその夢をかなえたように見えたが、目的がまったく違った。

「商品開発をするにはラボが必要です。だから以前パティスリーだった居抜き物件を借りて、コンサル業をおこなうための拠点にしました」

2018年3月、50万円の自己資金と300万円の助成金をもとに事業をはじめたが、資金はみるみる減少していく。しかし幸いにも借りた物件には厨房のほかショーケースも残っており、スイーツを製造・販売する環境が整っていた。

そうなれば、やることはひとつ。店頭でケーキを売り、コンサル事業の活動資金を得ることにしたのだ。

そのころ、事業のヒントを得るため参加していた地域特化型の創業プログラムで、転機が訪れる。高知県の地域商社「四万十ドラマ」の代表であり、創業プログラムのメンターでもある畦地履正(あぜちりしょう)さんとの出会いだ。半年間にわたるプログラムが終わるころ、畦地さんから声をかけられた。

「新しい工場の建設をサポートしてほしい」

小澤さんは「狙い通り。やっぱり声をかけてくれた」と心のなかでガッツポーズをした。実は小澤さんは以前から畦地さんの存在を知っており、四万十ドラマの仕事をサポートしたいと考え創業プログラムに参加したのだという。