蕎麦屋と甘味(スイーツ)の関係は意外と古い。日本最古の蕎麦屋「本家尾張屋」の創業は寛正6(1465)年といわれているが、初めは蕎麦菓子の販売から始まったという。江戸時代、街道の茶屋が蕎麦を扱うようになり、その後蕎麦屋として発展したという側面もあるようだ。
多忙な老舗蕎麦屋などでは甘味(スイーツ)まで手が回らないということはあると思うが、中には「蕎麦がきぜんざい」や「蕎麦だんご」、「蕎麦茶アイス」などを販売している店もある。東京都新宿区神楽坂にある「蕎楽亭」では「蕎麦茶アイス」が人気である。神奈川県川崎市川崎区殿町にある実験工房的な店「粋に味わうMISOCAのとき」では「蕎麦茶プリン」が人気だ。京都府宇治市にある「伊藤久右衛門宇治本店」では「茶蕎麦」と「抹茶パフェ」などがいただける。
大衆蕎麦店と甘味の出会い
そんな中、大衆蕎麦店でも最近、甘味を販売し話題となっている店がある。JR山手線の原宿駅から竹下通りに入ったすぐにある「吉茶庵(KITCHAAN)」だ。茶蕎麦専門店として2020年3月26日にオープンした店である。赤坂・中目黒・代々木など都内に立ち食い蕎麦チェーン店「吉そば」を展開する株式会社ノアの抹茶を使った新ブランドである。2020年末に行った時には甘味やドリンクはなかったのだが、2024年2月から販売開始したという。そこで3年半ぶりに訪問してみることにした。
インバウンドで大混雑、竹下通り入口に店はある
6月初旬の平日午前10時過ぎにJR原宿駅を降り竹下通り入口に着いたのだが、その混雑ぶりに異様さを感じるほど驚いた。2020年末はコロナ禍真っただ中で人はほとんどいなかった。それが今はアジア系、南米系、西欧系のあらゆる外国人が駅前に集結して一斉に竹下通りの写真を撮っているのだ。自分も一緒に撮ったわけである。円安効果は凄まじい。「吉茶庵」はどうだろうか。入店するとすでに2組の外国人達が席に座り甘味を食べている。券売機をみると以前はなかった「甘味」と「ドリンク」のボタンが確かに増えている。しかも、英語と中国語の切り替えもできる。秀逸な券売機である。
「吉茶庵」では茶蕎麦と甘味をセットとして頼む必要はなく、別々に注文できる。つまり利用者は茶蕎麦だけでもいいし、甘味とドリンクのセットだけ、あるいはドリンクだけでもOKというわけだ。
茶蕎麦のうまさがダイレクトに
蕎麦は温かい蕎麦と冷たい蕎麦があり、更科と茶蕎麦を選択できる。温かい蕎麦は「天ぷら蕎麦」、「野菜天そば」、「唐揚げそば」などが人気。抹茶の味をダイレクトに味わうなら、「天ぷらせいろ」、「野菜天せいろ」、「とろろせいろ」などの冷たい蕎麦がおすすめだ。