「自信があったし、失敗するとは一切考えませんでしたね」と力強い声で当時を振り返る。
念願の初仕事
四万十ドラマは、高知県四万十川流域の農産物を生かしたスイーツの商品開発や製造、販売をおこなっている企業。手づくりが主体だった既存の工場では生産が間に合わなくなり、新工場を建設して生産量および事業の拡大を目指していた。
畦地さんは、なぜ小澤さんに依頼したのだろうか。
「最初、パティシエはスイーツをつくる専門家というイメージが強かったんです。でも半年の間に、小澤さんは店舗経営や工場運営をビジネス視点で考えられる方なんだとわかりました。地域で新しい仕組みをつくろうとしている点にも共感して、サポートを頼んだんですよ」(畦地さん)
2018年10月、こうして念願のコンサルがスタート。初となるこの案件こそが、現在のスイーツスタンダードを形づくる原点となる。
小澤さんが最初に取りかかったのは、新工場で製造する商品を決めることだ。もともと四万十ドラマは、新工場建設にあたり地元の名産「しまんと地栗」を使った商品開発を希望していた。
しまんと地栗は一般的な栗よりも1.5~2倍大きく、強い甘みが特徴だ。しかし山の傾斜地で育つため、生産者の高齢化や後継者不足により収穫量が激減していた。
それでは商品を開発したとしても、食材不足がボトルネックになり量産は難しい。そこで目をつけたのが、もうひとつの名産「にんじん芋」だった。さつまいもの一種で、断面がにんじんのようなオレンジ色をしており、ねっとりとした濃厚な甘みがある。
「四万十ドラマさんがつくっているスイーツのなかに、にんじん芋を原料にした『いも焼き菓子ひがしやま。』という商品があるんです。栗より芋のほうが収穫しやすいので、この商品の売り上げをもっと伸ばしましょうと提案しました」
手づくりから機械化へ
しかし既存の工場では、芋を炊いてペーストにするのも、ペーストを混ぜ込んだクリームを絞るのもすべて手作業。体への負担が大きく「4人がかりで1日1000枚つくるのが精一杯」だという。