今から約250年前、桜島の大噴火によって生まれた新島。「新島行雜記」(昭和12年7月/内藤喬著)によると、噴火から21年を経た寛政12(1800)年、薩摩藩の奨励によって桜島から4組の家族が移住したという。

 その内の1組、親子3人で移住した川畑平左衛門一家の8代目が佐々木和子さん(65)である。

佐々木直行さん(左)と和子さん 撮影=林らいみ

 新島に二人きりで暮らす和子さんと夫の直行さん(72)は、民宿兼カフェ「ニューアイランド佐々木」を営みながら、さらに個人海上タクシーの運航や島のガイドツアーなどを行う。島の観光を一手に引き受ける彼らの生活は、聞けば苦労も絶えないようで……。(全2回の2回目/はじめから読む)

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買い物は“船と車で1時間”の対岸へ

――新島に二人きり、町中で暮らす私たちには想像もつかないような大変なこともあるかと。

和子さん 実はゴミ捨てが大変ですね。私たちのほかにもう一つ世帯があれば、行政がちゃんと収集に来てくれるようですが、私たちは桜島に行ってくださいって役所に言われてます。もちろん、決まった曜日の朝、決まった時間に。

 桜島までは船で10分かかるのですが、島だから朝早く行けない状況もあるんです。風が強かったり、波が高かったりして。

 コンポスト(生ゴミや落ち葉などを土に還し、たい肥に変えてくれる容器)みたいなものも試したんですよ。そしたら、チューちゃんが出てきてもう大変です。役所にそれを言ったら、とにかく餌になるものを放置しないでくださいって言われました。

大隅半島から見た新島

――資料によると、ネズミはこの島に多いようですね。昔から被害が大きかったとか。それから、もちろん新島にはスーパーもコンビニもありません。買い物はどうしていますか?

直行さん 北に位置する国分(霧島市)まで行くことが多いです。桜島の浦之前港に渡り、車に乗り換えて1時間かけて買い物に行きます。

和子さん 1週間に1回くらいやね。車を桜島の知り合いのところに停めさせてもらってますから、車に乗って陸まわりで国分から鹿屋に行ったり、鹿児島市内に実家があるんで用事があるときはそこまで行ったり。

夫の直行さんが船を運転する

 だから、船が大事。命だもん。新島には行政連絡船が絶対に必要なんですよ。

――新島と桜島を結ぶ行政連絡船が2026年度以降廃止されることになりましたね。