証拠不十分のまま終身刑を宣告され、29歳にして人生を奪われた元世界ランカーのボクサー、ルービン・カーター。全員白人の陪審員が下した有罪評決の裏には、人種差別と検察・警察による証拠の歪曲があった。その後の彼の人生を、新刊『世界で起きた恐怖の冤罪ミステリー35』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

無実の罪で20年近く収監されたルービン・カーター ©getty

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29歳にして終身刑に

 この他、事件の唯一の生存者も、犯人は黒人男性2人組と証言したものの、その身体的特徴はカーターとアーティスとはまるで異なっていた。

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 殺人罪で起訴された両被告の弁護人は、前記したように2人が犯人ではない数々の証拠をあげ、事件が起きたとき2人が別の店(ホットスポット)にいたことを目撃した証人も法廷に召喚、無罪を主張した。が、1967年5月25日、12人全員が白人で構成された陪審員が下した評決は有罪。カーターとアーティスに終身刑が宣告される。

 カーターは逮捕当初から獄中でも不屈の精神を貫き通していた。やっていないのになぜ囚人服を着用しなければならないのかと看守に反発し、2ヶ月間地下の独房にぶち込まれた。独房を出た後は、刑務官の説得により、囚人病院で着用するストライプも囚人番号もない白いパジャマを着ることを条件に普通の牢屋で過ごし、自ら昼夜を逆転させ、「俺をここから早く出せ」と喚き散らした。