別の社長の話ですが、商談ルームのインテリアから、その社長が車好きであるとわかったこともあります。たまたま部屋をキョロキョロして、壁の色が珍しい色味だったので、それを話題にしたら、実は社長の好きな車のテーマカラーだったのです」

商談会では事前に、決算書などで先方の取り組みや情報は把握して行くが、現場では9割5分、趣味の話になるという。

「だからこそ雑談でお互いの人となりを知る、先方からサントリーと取り組みたいと思ってもらえるかどうかというのは、この瞬間にかかっているように思います」

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相手の顔色によって資料を急遽変える

バイヤーには月に一度は会いにいくため、よく知る相手であることが多い。いろいろな質問を投げかけて、相手のリアクションを見ながら、その場の温度を測っていく。

このときに投げる質問にも、ちょっとしたコツがある。

「いつも会うバイヤーだからこそ、その日のコンディションをつかむために、一定の粒度を保った質問にするのです。例えば、家族の時間を大切にされている方なら『先週末はどこに行かれたのですか?』。仕事熱心な方なら『私はあそこのチェーンに行きましたが、こんな売り場でしたね』。そこで、いつも三言答えてくれるところが、一言、二言だったりすると、今日はテンションが低いな、何かいやなことがあったのかなと、こちらも温度を測りやすくなるのです」

そしてバイヤーの調子がよさそうなら予定通り商談に入るが、イライラしているときは、商談の内容をアレンジしていく。

「いきなり本題から入ってしまうと多分ノーをもらってしまいそうなときは、小さいイエスをもらえるやり方に変えていきます。例えば、紙資料はすでに提案順に印刷してあり、商談の順番は変えられないので、とりあえず紙資料はわきに置いて、画面でスライドを見てもらう。スライドでは順番を入れ替えて、『この取り組み、うまくいきましたよね、今回もどうですか』など、相手にとってイエスと言いやすいことを提案し、イエスを積み上げていきます。それで最終的に、当初の提案内容についても、イエスがもらえるようにもっていきます」