顧客が急にご機嫌ナナメになったら、どうリカバーすればいいのか。サントリーのトップセールスで営業一筋17年の若村由樹さんは「そういう困ったシーンに何度も遭遇したことがある。機嫌の悪さのタイプによって、話す内容、繰り出す質問がある」という――。
「今日は電車で?」と聞く理由
今は支店長としてスーパー6チェーンをチームで担当する若村由樹さんだが、現場営業だったころは、取引先に数々の提案をしてきた。
新商品が出たときには、得意先のスーパーのバイヤーに提案をしに出向く。しかし席についた瞬間に、いきなり「弊社の新商品は~」と始めるのは重い。必ずアイスブレイクをはさむという。
「商談ルームにパッと入ってバイヤーにお会いしたときの見た目と第一声で、その方は今、温まっているのかな、冷たいのかな、テンションが高いのかな、低いのかな、とその場の温度を測ります。初対面の方は人となりがわからないので、何か会話をすることで、この方はこういう状態なのかなと想像しながら、商談に入る前に温度を調整していきます」
初めての相手には「今日は電車でいらっしゃいました?」と切り出すことが多い。
「最初は当たり障りない質問で、会話の糸口を探るというイメージです。そこから『私もその近くに住んでいます』『こないだ電車で通りました』など共通点を探っていきます」
まったく共通点のない相手とどう距離を縮めるか
しかし、人によっては全く共通点のない人もいる。
「支店長になってからは、お得意先の社長や部長など、いわゆる上職者の方々と商談会で初めてお目にかかることが増えました。そんなときは、こちらから『どんなふうに休日を過ごされているんですか』と聞くことが多いですね。休日の過ごし方から趣味の話につないで、深掘りしていくのです。
そこで共通点があれば、話が発展していきますが、そうでなければ、もうこちらは学ぶモードになるしかありません。先日、お会いした社長は、あるモノのコレクターでした。内容を言うと個人が特定されるくらいコアなご趣味で、私を含め多くの方にとっては、未知の話題です(笑)。休日は、それらのコレクションを眺めているとおっしゃいますので、そこから「どういうものですか?」「初めて知りました」と周りの方たちと質問攻めにしました。そうしたら社長もリラックスして話してくださり、場の温度が一気に上がりましたね。
