その役割を任せてもらえるまで、お得意先様と信頼関係を構築できたことが評価されて、2023年には社長賞を受賞した。

機嫌の悪い相手に投げる最初の質問

もちろん、若村さんもうまくいくことばかりではない。

「十何年も前のことですが、一回だけ急に怒られたことがあります。商談資料が全くできていないと目の前で資料をビリビリ破られて、お得意先は席を蹴って去る……、雑談どころか猛ダッシュで追いかけて、平謝り。もう手の施しようのない究極の場面ですが、そこまでいかなくても、来た瞬間に機嫌が悪い、あるいは来たときはふつうだったのに、だんだん機嫌が悪くなるという2パターンがあります」

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そういうときは、どうするか。まず前者の来た瞬間に機嫌が悪いときは?

「これは明らかにこちらが原因ではないので、どこに原因があるか、キャッチボールしながら探っていきます。例えば最初の質問はこんな感じです。

『最近、お仕事忙しいですか?』
『今、メールがたまっていらっしゃいます?』」

よくあるのが「商談が面倒くさい。急ぎで返さないといけないメールがあるのに、サントリーに10時と言われているから、10時から商談をしないといけない」と内心で思っているケース。

「こちらは何が原因なんだろうと、何となく当たりをつけて、解決できそうなことがあれば提案します。例えば『大丈夫ですか? メールとか対応しないといけない件があります? 商談は、10時からでなくて、メールが落ち着いてからでいいので、それまで我々は向こうに行っていますね』と言うと、相手は『いいの? ちょっとこれだけメールするから。あの部署の○○が面倒くさいんだよ』なんて言いながら、ちょっとホッとされます」

こちらが時間をつくることで、相手はすっきりして商談の席についてくれる。それだけでなく、「このバイヤーはあの部署のことを面倒くさがっている」という情報まで得ることができるのだ。