雑談で温度調整を丁寧に行うほど、商談がうまくいく確率は高まるのだ。

出産で営業スタイルがガラッと変わった

今でこそ洗練された営業スタイルを身に付けた若村さんだが、若い頃は押しの一手だったという。それでは通用しないと痛感したのが、今から14年前、育児休業から復帰したときのことだった。

「当時、群馬エリアを担当していましたが、育児休業前とお得意先は変わらないのに、私だけが何もかも変わり、とにかく時間がないという状況でした。時間がないので、どうしても性急に商談を進めようとしてしまう。そんな焦りが先方に伝わっていることを、周りの人から聞かされて初めて知り、根本的に営業スタイルを見直していく必要を感じました。

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お客様の求める営業とは何か。こちらが一方通行になっていないか、相手が本音を話してくれているのか、そういったことを突き詰めていったときに、ただ押すだけでなく、まず雑談で相手の状況、状態を把握し、そして場を温めてから商談に入るという方法につながったのです」

社長賞を受賞

こうした積み重ねによって「若村さんには、いろいろ話しているし、御社も頑張ってくれそうだから、サントリーに任せるよ」と2023年春、得意先の一つから任せられたのが“カテゴリーリーダー”だ。

カテゴリーリーダーとは、スーパーのお酒売り場で、該当カテゴリーの棚割りを担当する仕事。ベンダー(卸売業者)が行うこともあるが、このチェーンではメーカーが担う。当初、そのスーパーでは他社がカテゴリーリーダーを担当していたが、若村さん率いるチームの提案力が買われて、サントリーが担当することになった。カテゴリーリーダーが変更になることは珍しいことだという。

「カテゴリーリーダーになった企業は、そのスーパーに対して“売り上げが伸びる棚”を提案し、実際に作業し、実現させる役割があります。棚の売り上げを伸ばすことが第一目的ですから当然、当社だけでなく、他社の商品も並べます。それを任せていただくことは、非常に身の引き締まる思いです」