《この年の大みそかはスタジオで普通にレッスンでした。ちょうど『紅白歌合戦』が始まるくらいの時間に電車で帰宅したときのせつなさは忘れられません。この世界は甘くはないなって…。「来年こそは」と気持ちを切り替えるには、正直ちょっと時間がかかりました。今までにAKB48ではいろいろ想定外の出来事がありましたが、たいていのことでは動じなくなったのはこのときの経験が生きているのだと思います》(『日経エンタテインメント!』2015年7月号)。

 2期生の秋元才加(さやか)もこの年は「絶対に出たい」と思っていただけに悔しがった。大晦日を間近にして、この悔しさを忘れないようにとNHKホールに一人出かけ、その建物を前に「来年必ず」と誓ったという(前掲、『AKB48ヒストリー』)。

 AKBの快進撃はこの翌年に始まった。2009年7月、シングル表題曲を歌うメンバーをファン投票で決める「AKB48選抜総選挙」の第1回が開催された。上位7人は前田敦子・大島優子・篠田麻里子・渡辺麻友・高橋みなみ・小嶋陽菜・板野友美で、「神7(セブン)」と呼ばれるようになる。10月リリースの「RIVER」はAKBのシングルでは初めてオリコン週間チャートで初登場1位にランクインした。シングルリリースのたびに各地で開催する握手会にも、集まるファンが増え続け、それに応じて会場も当初はデパートの屋上や駐車場だったのが、どんどん広い場所へと移っていった。

初のオリコン1位を獲得した「RIVER」(2009年)

総勢72名での念願の単独初出場

 そして11月23日、紅白歌合戦の出場歌手が発表され、AKBは前年果たせなかった2度目の出場を決める。発表時、主力メンバーは総合プロデューサーの秋元康とともに千葉のラジオ局bayfmの公開生放送に出演中で、秋元から出場決定の第一報を告げられると、メンバー全員と集まったファンは歓声を上げて喜んだ。

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 念願の紅白単独初出場でAKBはまず、選抜メンバー16人が「RIVER」を歌い、曲が「涙サプライズ!」に切り替わった瞬間、総勢72名が紅白のステージを埋め尽くした。このときのことを大島優子は《本当に『帰ってきた!』って感じでしたね。『これがAKB48だ!』っていうのを見せつけようって。周りのアーティストさんも『AKB48だ!』『いっぱいいるね』っていう感じで、2007年の時とは全然違いました》と振り返っている(前掲、『AKB48ヒストリー』)。(つづく)

次の記事に続く 紅白で突然の“卒業宣言”→北島三郎のラストに「水を差した」と批判も…大島優子(当時25歳)がAKB卒業を決めた“本当の経緯”

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