大島のなかでは、前田が卒業して3年が経っていたのに対して自分はまだ1年半、紅白に最後に出場したのもまだ2年前とあって、《間が空いてないし、しかも卒業発表までさせていただいた場だったから、そこにまた出演させていただいていいのかなって。AKB48に対しても、卒業生の私が出ちゃっていいのかなって考えたら、すぐにOKとは言えなかったの》だという(日刊スポーツ新聞社企画・編集『涙は句読点 普通の女の子たちが国民的アイドルになるまで AKB48公式10年史』日刊スポーツ出版社、2016年)。
「あっちゃんが、優子も出てくれないかな~って言ってるよ」
それでも、スタッフから「あっちゃん(前田)が、優子も出てくれないかな~って言ってるよ」と聞かされ、最終的には高橋を驚かせて喜ばせるために協力したいという思いが勝り、大島も出演にOKしたのだった。NHKホールでのリハーサルは、AKBの現役メンバーたちが日本レコード大賞の会場に行っているあいだに前田と大島の二人だけでこっそりやって、本番に備えたのだとか。
おかしいのは、前田が足を引っ張りたくないので完璧にやりたいと、大島以上に懸命に練習していたということだ。大島のほうは《今回は「とりあえずたかみなが喜んでくれさえすればOKかな」って思ってたから(笑)》、あんなに練習する前田を初めて見たと妙に感心してみせた(同上)。
前田は衣装の早着替えも何度も練習したらしい。おかげで本番では、「ヘビーローテーション」から「恋するフォーチュンクッキー」へのつなぎでの衣装替え中、高橋がサプライズにすっかりテンションが上がり「ねぇ、ねぇ、何でいるの?」と訊いても、二人は真顔で手際よく着替え、高橋をして「うわっ、プロだ」と言わしめた。
この3人が今年、10年ぶりに紅白のステージに集結する。現在、大島と前田は俳優、高橋はタレントとして活躍中だ。彼女たち以外に今回出演するAKBの卒業生の5人――板野友美・小嶋陽菜・指原莉乃・峯岸みなみ・柏木由紀も芸能活動を継続しながら、小嶋はアパレル経営者、指原はアイドルプロデューサーとして辣腕を振るう。同業の夫・林遣都とのあいだに今年第2子を儲けた大島をはじめ、前田・板野・峯岸は子育ての真っ最中というのも時代の流れを感じさせる。
筆者個人は正直に言えば、現役メンバーよりも卒業生が必要以上に目立ってしまうことにはいささか疑問を覚える。しかし、紅白にかぎっていえば、ここしばらくその大舞台を経験してこなかったAKBにとって、百戦錬磨の先輩たちがステージでどう振る舞うかを間近で見ることは、何よりの勉強になるはずだ。これをきっかけに、AKBが世間から再度注目されることを期待せずにはいられない。
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