浅田真央を彷彿させる「天才少女」の存在
司との二人三脚でフィギュアを始め、だんだんと上達していったいのりは、全日本フィギュアスケートノービス選手権の出場を目指して動き始める。その動機となり牽引力となるのが、狼嵜光という紛うことなき天才少女の存在だ。
いのりと同じ世代ながら全日本ノービスB大会を連覇した実績は、あの浅田真央と同じといえば分かるだろう。そんな光といつか勝負したい、勝ちたいという思いを心に刻んでいのりは滑り続ける。
絶好のライバルの存在は、熱い師弟関係と同様にスポーツものの面白さを左右する要素のひとつ。だから『メダリスト』も面白い。なおかつこの作品では、光を頂点にしつつ大勢のライバルたちが登場して、それぞれのフィギュアに対する思いを感じさせてくれる。
「ルッツ」「アクセル」…ミラノ五輪に向けた予習もバッチリ
フィギュアというスポーツに関する細かくて濃い描写も、『メダリスト』の魅力の大きな要素だ。「5歳までに始めなくてはならない」という背景もそのひとつで、ジャンプにはどのような種類があってどのように跳ぶのか、採点は何を基準に行われているのか、大会にはどのようなものがあってオリンピックに出るにはどうすれば良いのかといった、フィギュアの教科書にでも書かれていそうな情報を、ストーリーの中でしっかり学ぶことができる。
ルッツだアクセルだサルコウだといったフィギュアの大会の中継で出て来る用語の意味も分かるようになる。本作を観ておけば、ミラノ冬季五輪に向けた予習も万全だ。
いのりがステップアップするにつれて、競技もどんどん厳しくなっていく。情熱や努力や才能だけでは乗り越えられない壁にもぶつかる。そこでただ技を磨くだけでなく、採点のルールも見据えて高得点が出せる構成を考え抜き、前に滑った選手を見て構成を変えるような戦術も繰り出す様子に、改めてフィギュアという競技の奥深さを知ることができる。
同時に、地方でお客さんが少なくなったスケートリンクが閉鎖され、地元に根ざして競技をしている選手たちが道を諦めなくてはならなくなるエピソードも描かれる。競技のことだけでなく、フィギュア界に関連したトピックを余さず拾って実態を知ってもらおうとする丁寧なスタンスが、『メダリスト』という作品をしっかりと地に足がつき、社会と繋がったものにしている。だからこそテレビの向こうの出来事ではなく、身近なものとして没入できるのだ。
