娘のために続けるライフワーク

 貴さんは2024年に防災士の資格を取った。市の登録防災士として小学校で防災の授業を担当している。

「今の小学4年生は社会科で防災を学びます。娘が亡くなったのと同学年です。ここでは私の経験ではなく、どうやったら自然災害から身を守れるかを話しています。地震が起きたら机の下にもぐる。ある意味では正解です。真面目だった娘はあの時にそうしたと思います。でも海沿いでは外に出て一目散に逃げるのが正解でした。もしそうした教育を受けていたら、『お婆ちゃん、津波が来るよ』と、うちの母の手を引っ張って逃げていたと思います。実際の行動につながる知識を教えられる人間でありたい。残りの人生のライフワークです」

薄磯では早咲きの桜が咲いていた(いわき市平薄磯)

 今年で東日本大震災から15年が経過した。記憶の風化は進み、事実を知らない世代も増えている。

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「災害は毎年あちこちで起きます。全ての災害を理解できないし、学習もできません。ではどうするか。被災した地元の人間が語り継いでいくしかないと思います。私も語れるうちは語っていきます」

 貴さんは自分に言い聞かせるように話した。

次の記事に続く 「オレのこと、置いていかないでけろ」いまも頭から離れない最期の表情…津波から逃げのびた夫婦が、あの日から背負い続ける“宿命”

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