・死亡から70時間以上経過した遺体の解剖で死亡時刻を特定することは不可能
・頭から生まれてくる赤ちゃんの首の部分を持って引っ張り出す行為は一般的な分娩介助
・肺などの浮遊試験(※)の正確性は疑わしい。死後3日が経過しており、腐敗が始まり内臓にガスが発生していた可能性があるから。
※生きて生まれた場合、赤ちゃんが呼吸したことで肺に空気が入るため、肺を水につけると浮くことを前提とした解剖試験
蓮田氏は意見書とともに、助産師の介助の状況を模型で示した画像を神戸地検に提出した。頭から出てくる赤ちゃんを首を持って引っ張り出すのは、ごく日常的に行われる介助行為であると示す図だ。
女性の行為は「遺体の隠匿」なのか?
女性は死体遺棄罪でも起訴された。
だが、孤立死産による死体遺棄罪の最高裁判例では、赤ちゃんの遺体をタオルで包み、段ボール箱に入れて自室に置いていた行為が「遺棄」ではないという結論が出ている。2020年に熊本県で起きたベトナム人技能実習生双子死産事件だ。一審、二審では死体遺棄罪で有罪判決だったところ、2023年に最高裁が逆転無罪の判決を言い渡し、確定した。
この事件で弁護団の主任弁護人を務めた石黒大貴氏は、兵庫県警の「死体遺棄」の解釈に疑問を呈した。
「死体遺棄罪は、判例上、死体を隠匿することについても処罰の対象としています。死体が隠されることにより、死者が弔われることのないことになれば、死者に対する敬けん感情が害されると考えられているからです。一方で、何をもって死者に対する弔いといえるのかについては一律で決まるものではありません。そのため、最高裁は、形式的には死体を隠す行為であっても、それが習俗上の埋葬と矛盾する行為といえるかによって、遺棄の判断を行うとしています」
「女性が死亡届について記述したメールを赤ちゃんの死後24時間足らずで慈恵病院に送信したことを踏まえると、女性には、死産を届け出て、埋葬するつもりがあったといえますから、隠匿とは言えないのではないでしょうか。遺体の体液の流出を防ぐレジ袋や暗室のクローゼットといった環境は、死者を弔う上で必ずしも矛盾するものではありません」