埋葬の意思が確認できる以上、赤ちゃんの死亡から遺体発見まで2日半かかったのは結果論であり、死体遺棄罪の検討要件に該当しないということだ。

病院を受診しなかった女性への「罰」

女性の長期間にわたる拘留についても、性と生殖に関する自己決定権(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の観点から問題があると石黒氏は指摘する。

「女性は出産直後で、さらに赤ちゃんの死亡により精神的ダメージを受けているにもかかわらず、受けるべき医療的ケアがなされない状況を警察によって強制的につくられました。未受診だった事実に対して警察が科したペナルティであることは間違いありません。妊娠を相談しなかったことに対する『罰』ではないかということです。この対応は出産したばかりの彼女の尊厳を脅かしています」

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こうした孤立出産事件では、なぜ家族に相談しなかったのかと女性が批判されることは少なくない。

だが、周囲に相談したかどうかは、死体遺棄容疑での逮捕の妥当性を高めることにはならない。女性が妊娠を誰にも相談しないことは権利として守られているからだ。

いつも母親だけが矢面に立たされる

石黒氏は言う。

「憲法13条の幸福追求権に含まれるプライバシー権です。家族や友人に妊娠を知らせなかったことを咎める感情が社会に潜在意識としてあるとすれば、それは彼女のプライバシー権を無視したことになります。本来、自分の生殖に関する情報を誰に明かすかは本人が選択でき、妊娠・出産の事実を隠していたことを罪と捉えるべきではありません」

産婦人科を未受診だったことにペナルティを与える意識が逮捕の判断に加勢していたとしたら、感情論でしかない。石黒氏によれば、妊娠中に医療機関を受診しない女性を罰する法律はないからだ。

「未受診の女性には、匿名で安心して相談し、名前を伏せて出産することも選択できるなど、社会が提供するべき支援サービスが不足している、むしろ問題視すべきはこの点でしょう」