――昨年『きょうの料理』(NHK Eテレ)で「“ばけばけ”のふっくらしじみ汁」として「しじみは口が開いたら一度ザルにあげ、汁に味噌をといてフツフツとするまで温めてからしじみを戻し入れる」というレシピを紹介されていました。このレシピが、ドラマ内でもフミ(池脇千鶴)からトキに、トキからタエに、同じように伝えられていましたが、これは広里さんのオリジナルレシピですか?

広里 しじみって、火を通しすぎると身が硬く、小さくなってしまうんです。どうしたら身をふっくらさせられるか、いかにしてトキちゃんが心から「はぁ~」と言えるぐらい美味しそうに印象づけられるかと考えて、このレシピになりました。

 これがシーンにも反映されて、フミさんやトキちゃんも「しじみを一度ザルにあげる」という一手間をかけて作っています。お客さんが召し上がるタイミングに合わせて、ふっくらとした身が入った温かい汁をお出しできるという理由から、松江の旅館や料理屋さんでもこの手法が使われています。

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トキとヘブンが結婚後、新居に移って初めての朝餉の準備。口が開いたしじみをトキがザルにあげようとしている (C)NHK

髙石あかりが「はぁ~」と息を吐いたしじみ汁

――フミからトキに、トキからタエに伝わった、「コロコロ~コロコロ~」という、しじみの洗い方も独特でしたね。

広里 あれも松江で現地の方に実際に洗い方を見せていただきながら教わりました。同じ貝類でも、アサリなんかは殻どうしをゴリゴリとこすり合わせて洗いますよね。でもしじみは、あまり強くこすると、あの殻の美しい黒の部分が禿げ落ちて、汁の中に混じってしまうんですよ。出雲ことばで「めげる」「貝がめげるでな」という言い方をするんですけど。

 この、優しく洗うやり方をフミさんがトキちゃんに、トキちゃんがタエさんに教えるときに、どう表現したらいいのかと悩みました。松江の方にも相談して、「コロコロ~」とオノマトペで伝えるのがいいだろうということになり、台本に取り入れられました。

それまで自分で襖を開けたことすらなかったタエに、トキがしじみの洗い方から料理を教えた。思いがけず訪れた、血を分けた母娘の時間だった (C)NHK 

――しじみ汁を飲むときに髙石あかりさんが出す「はぁ~」という声で、「本当に美味しいんだろうな」というのが伝わってきました。ドラマに登場した料理で、髙石さんがお気に入りのメニューは他にもありましたか?