広里 ヘブンさんが山橋薬舗の奥にある西洋料理店でこっそり洋食を食べて息抜きをしていた週。ヘブンさんの口元についた赤いケチャップみたいなソースがきっかけで、トキちゃんが不審に思うというエピソードがありましたが、あのソースも難しかったです。

 台本にはたしか「赤いソース」と書かれていたのですが、ケチャップをそのまま使ったら、せっかくのステーキがハンバーグの味になってしまう。でも、照明との兼ね合いや「口紅を連想させる」という設定もあって「赤さ」は大事なポイントでした。さらに、ヘブンさんのほっぺたにしっかりとくっつくように、濃度も重要。

 どうしようか……と考えて、ケチャップをベースにしつつ、赤ワイン、玉ねぎとトマトを濃縮したぺースト、それに少しウスターソースを加えて、赤さは残しつつもステーキに合う、そして濃度もちょうどいいソースを、試行錯誤しながら作りました。

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密かに山橋西洋料理店に通いつめ息抜きをしていたヘブンと、彼を問い詰めるトキ。小さな「優しい嘘」から、新婚夫婦にボタンのかけ違いが起こってしまった (C)NHK

「えー! 本物なの?」キャストも驚いた兎のしめこ汁

――今回の『ばけばけ』で特に目を奪われたのが、その家が今置かれている状況や経済的事情が「食事」からとてもよく伝わってきたことでした。物語序盤から終盤までの、松野家の「浮き沈み」がよくわかる食卓の工夫について教えてください。

広里 第1週の始まりではおかずが細いメザシ1本と漬物だけだったのに、司之介さんが兎の商売で儲けてはぶりが良くなってからは、おかずが5品にランクアップしました。鴨の塩焼きなど贅沢なおかずを出したり、お汁の表面からはみ出るほどにふんだんに入ったしじみで裕福さを表現しました。「橋の北側」に住んでいた頃は「兎バブル」の前も後も、白米を食べられるという設定でした。

司之介が兎の商売で一時成功し、はぶりが良かった頃の松野家の夕餉。白いご飯にしじみ汁、煮なます、鴨の塩焼き、ワカサギの煎り酒浸し、津田かぶの糠漬け、黒田セリの煮浸し (C)NHK

――そしてバブルが弾けてしまって……。

広里 手元に残った兎を使って、フミさんが「しめこ汁」を作りましたが、この具には本当に兎の肉を使っているんです。兎は昔も今も、日本を含め世界中で食されています。今回は長野県から仕入れた肉を使ってごぼう・ねぎ・生姜と一緒に仕立てました。キャストの皆さん「えー! 本物なの?」と驚いていました。

「兎バブル」がはじけ、手元に残った兎をしめて作った「しめこ汁」。実際に食用の兎の肉が用いられている (C)NHK

 借金を抱えて長屋に移り住んでからは、ごはん・しじみ汁・たくあんのみ、という寂しい食卓に。このときのごはんは、色が白く見えないように玄米を3分づきにして、麦飯を混ぜたものを出しています。監督とも相談して、お汁の中のしじみもぐっと量を減らしました。