――さらに貧窮が進行して、いよいよ「身なし・殻のみ」になってしまったしじみ汁もインパクトがありました。

広里 セットに入ってお膳を見た小日向文世さん(祖父・勘右衛門役)が、「本当に殻だけになったのか」と笑っておられて。岡部さんと「こんなんじゃ働けないよ!」「力出ないよね」なんて話していらっしゃいました。

 私も台本を読んで、「殻だけでしじみ汁が作れるものかな……」と思いましたが、辛うじて貝柱が残っているので、そこからごく微量の旨みは出るのかなと。借金取りを追い払う塩にさえ窮するという設定でしたので、味噌もごく少量しか入れておらず、キャストの皆さんには大変味気ないお汁を飲んでいただくことになってしまいました。

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トキとヘブンが結婚し、松江の新居に引っ越した頃の食卓。のどぐろの煮つけ、ひじきと人参の白和え、かぶと揚げの煮物、瓜の浅漬け、いんげんの胡麻和え、しじみ汁、白いご飯 (C)NHK

「『つまみ食い』のおかげで、フードロスほぼゼロの現場なんです(笑)」

――ドラマの撮影はテスト、本番と段取りを重ねますが、いわゆる「消え物」と呼ばれる食べ物は、放送に映っている量の何倍ほど用意するものなんですか?

広里 基本はテスト・本番・予備で3倍の量を作ることが多いです。でも、たとえばヘブンさんが山橋西洋料理店で食べていたステーキなどは、一度ナイフを入れてしまったらもう使えないので、5倍ぐらいは作ったと思います。

江藤知事(佐野史郎)の自宅に招かれたヘブンと錦織。リヨ(北香那)が腕によりをかけた西洋料理はホタテのコキール、クロケット、「宍道湖七珍」のうちのひとつであるアマサギ(ワカサギ)と野菜を合わせたマリネ。メインの鶏肉のフリカッセにも、司之介が配達した牛乳が使われているという設定 (C)NHK

――残った分はどうするんでしょうか。

広里 それが、キャストのみなさんが「つまみ食い」で消費してくれるので、フードロスほぼゼロの現場なんです(笑)。「熊本編」に入ってからは、特に正木くん(日高由起刀)、丈くん(杉田雷麟)、おクマちゃんなど、若いキャストさんも増えたので、さらに頼もしいです。慣れない着物を身につけての長時間の撮影で、お腹も減りますものね。

――『ばけばけ』の放送も残りわずかとなりましたが、食事に絡んだ今後の見どころを教えてください。

広里 「熊本編」以降、トキちゃんとヘブンさんの茶碗が夫婦茶碗になっているんですよ。美術さんと相談して、そんなところにも「夫婦らしさ」を出してみようということで。息子の勘太くんが生まれて、この先さらに家族構成が変わっていくので、それに応じて食卓も変化していきます。そんなところにも興味をもっていただけたら、嬉しいです。

広里貴子(ひろさと・たかこ)/大阪府生まれ。辻調グループ校日本料理技術講師として勤務後、関西を中心に食を盛り上げたいという思いから(有)貴重を設立。食にまつわる観光まちづくり事業の協力や、料理教室、テレビ番組(料理系番組、歴史系番組他)や企業PR動画、雑誌などのフードコーディネート、ケータリング等、食のあらゆる事を「ごちそうプロデューサー」として行う。NHKの「連続テレビ小説」では現在放送中の『ばけばけ』を含む13作品の料理指導を担当。

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