その長所が、こうして評価されたのは素直にうれしい。けれども同時に複雑な思いも湧いた。父親が指さした45番の箇所に、(3)という手書きの数字が見えたからだ。
違う男性の箇所には(2)や(5)とあるから、おそらく候補の順位付けだろう。こちらも女性を順位付けしているわけだから当然と言えば当然だが、今しがた聞き取った話の内容と、三番手候補という現実を目にして、私はあきらめから撤退モードになった。
「家事の件、ありがとうございます。ただ、本人はおっとりしていて、親が言うのもなんですが、娘さんに比べたら全然たいした人間じゃないんです。ご検討いただいただけでも光栄ですし、これ以上のお願いは厚かましいかなって思います。せっかくお時間を頂戴したのに、申し訳ありません」
「やっぱり、トシを気にされますか?」
できるだけやんわりと、交渉の終わりを匂わせた。二人は戸惑い気味に顔を見合わせたが、短い間を置いて母親がおずおずと切り出した。
「やっぱり、トシを気にされますか?」
「えっ?」
急に振られてトシの意味がわからなかったが、どうやら年齢のことらしい。
「お宅の息子さんは36歳で、娘より1歳年下ですよね。男性と違って、女性はやっぱり歳が大事じゃないですか。ウチなんかじきに40ですから、そんな女じゃイヤだ、子どもだって産めるかどうかって言われても仕方ないと思うんです」
母親の横でうなずいた父親が、複雑そうな顔でつづける。
「私どもが住んでる田舎のほうじゃ、娘の同級生は2、3人の子どもがいるのがふつうですよ。今はそういう言葉は使わないかもしれないけど、娘なんか行き遅れです。リストを見たら同じ歳くらいの女性が結構いますけど、それは世間じゃあんまり相手にされなくて、だから焦った親が出向いてるのかなってね。お恥ずかしい話ですけど、ウチもなかなかご縁がありません。このままひとりで歳を取ったら寂しいだろうし、離れて暮らしている私どもにしたら、娘の将来が心配なんです」
まさかこんな展開になるとは思ってもみなかった。私は女性の「格が上」のようで臆していたが、相手の親は「歳が上」だからと遠慮していたらしい。
「親御さんのご心配はわかりますけど、今は40代で結婚したり、出産する女性だって多いじゃないですか」
フォローした私に、母親は苦笑いを浮かべる。
「そうなんですけどね。でもそれだって、お相手があっての話でしょう? 私も地元の知り合いに紹介を頼んだり、お見合いを組もうと思ってあちこちお願いしてまわったんです。でもなかなかいいお話がないし、たまにあっても娘の年齢とか、東京で働いていることを理由にお断りされたりして……」