小さく息をついた母親が、何か言いたげに父親を見る。視線に促されるように、父親が口を開いた。
「田舎じゃ若い人も少ないし、娘は東京にいるんだからこっちでお相手を探したほうがいいと思ったんです。こういう場なら親同士いろいろ話もできますし、娘の良さをわかってくれる方がいるんじゃないかなと。努力家だし、気配りできる子だし、職場でも慕われてるみたいなんです。今までひとりでいたのも、真面目に働いてるうちに婚期を逃しただけで、結婚したくないってわけじゃないですから」
親が変に探り合って話をややこしくしている気がした
同じ親として、我が子を思う気持ちはよくわかる。両親の誠実そうな人柄も垣間見えたが、一方でどう返せばいいのかわからなかった。二人が「歳」を気にするように、私はやはり「格」が気になるのだ。おそらく女性のほうが高収入、おまけに努力家と聞かされては、三番手候補の息子など相手にされないと引け目を感じてしまう。
けれどもふと思った。どちらが上とか下とか、それがどう問題なのだろう。私も、「お相手」候補の両親も、いったい何にとらわれて気後れし、こんなふうに相手を窺っているのだろう。
もしかしたら当人同士は上とか下とか気にせずに、案外意気投合するかもしれない。現に息子は女性を候補のひとりに選んだし、女性のほうは息子のリストを見て「いい」と言ってくれたという。どうなるにせよ選択権は彼らにあるわけで、代理の親が変に探り合い、話をややこしくしているような気がした。
「いろいろお話を伺わせていただき、ありがとうございました。せっかくの機会ですし、もしよろしければ息子の身上書をご覧ください」
一度は撤退モードになりながら、ここにきて私は身上書を取り出した。
「そうですか、ありがとうございます。なんだか無理を言ってすみません。こちらが今、お話しした娘です」
ホッとしたように微笑む母親は、手早く娘の身上書を差し出す。双方の交換が終わったタイミングで、主催業者のアナウンスが流れた。
──間もなく男性側のアプローチタイムは終了です。交流が終わった親御様は、順次お席にお戻りください。──
「お話しできてよかったです。確かに身上書をお預かりします」
「こちらこそ。ご縁につながるといいですね。どうぞよろしくお願いします」
私と「お相手」候補の両親は言葉を交わし、そろってお辞儀をした。受け取ったばかりの身上書をトートバッグに入れながら自席に戻ると、ほどなく次のアナウンスが流れ、今度は娘を持つ親からのアプローチタイムがはじまった。