――藤野さんは、その3つの質問の答えを聞いてどう思ったのですか。
藤野 父は否定していましたが、「おそらく全部当てはまるのかな」とは思っていました。けれどもその後、劇場公開が始まる少し前に4つ目の理由があったんじゃないかと気が付いたんですね。
――それはどんな理由だったのでしょう。
藤野 「精神科の受診記録が残らないように、自分たちで治そうと思ったんじゃないか」ということですね。
実際に父は、向精神薬を姉のお茶にこっそりと混ぜて飲ませていたんですが、もしかすると精神科の通院歴を残さないやり方で、自分たちでこっそり姉を治すことに賭けたのかもしれません。でもうまくいきませんでした。
それを入院していた父に聞いてみると「そうだったかもしれない」「昔のことだったのでもうわからない」と答えが返ってきました。父が98歳で亡くなったのは、劇場公開が始まった10日後のことだったのですが。
「もっと早く受診させるべきでした」藤野監督が思う『どうすればよかったか?』の答え
――映画に続いて、今回書籍も出そうと思われたのはなぜでしょうか。
藤野 僕としては、ドキュメンタリー映画は映像と音で観てもらうべきだと思っているので、音楽は使わず、ナレーションや文字情報は最小限に留めて作ることを制作方針にしています。
編集する以上、多かれ少なかれ「作り手の主張を伝えるために映像を使う」わけですが、やり過ぎると、ドキュメンタリーというよりは「ビデオアクティビスト」に近くなってしまうんです。
けれども、カメラのないところで僕が何を考えて、何をやっていたのか、僕が家族の中でどういう影響を受けていたかなど、映像だけでは入り切らなかった要素がたくさんありました。
一部はパンフレットにも書きましたが、「書籍を出しませんか」というお話をいただいた時、映画を公開した後に返ってきた反響も含めて、書きたいことはたくさん思いつきました。
――タイトルにもなっていますが、改めていま、藤野さんは当時「どうすればよかった」と思っていますか。
藤野 繰り返しになりますが、もっと早く、姉を病院に受診させるべきでした。そうすれば、姉はもっと違う回復の仕方をして、自分の意志でできることがもっとあったかもしれないと思います。
「統合失調症」という病気自体が可能性や時間を奪うだけでなく、それ以上に、周囲の不適切な対応によって、さらに多くの可能性や時間が失われてしまうものだと思います。
タイトルである「どうすればよかったか?」は、僕自身が40年間抱え続けてきた疑問です。この問いを投げかけることで、これを観た人、読んだ人が「どう対応するべきだったか」を一緒に考えるきっかけになればと思っています。
撮影=佐藤亘/文藝春秋
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