「永瀬さん、苦しそうにしていますね」と呟いた棋士

 現在の局面は、永瀬玉の直線上にいる香の利きが脅威。だから、永瀬はおそらく歩で香の利きを止めるのだろうと見ていたが、なんと香の利きではなく角の利きのほうを止めにいった。玉頭正面は大丈夫なのかと屋敷と顔を見合わせる。

難しい判断を迫られる永瀬

 ところが調べてみると難しい。ヘタに攻めると玉を上部に逃がしてしまう。だが検討の良いところは、ダメならすぐに局面を戻せること。屋敷、山口と3人で、ああでもないこうでもないと継ぎ盤を突き回し、指し手の順番を替えて……とやっているうちに、偶然にも妙手を発見した。だが、この手順は実戦では非常に指しにくい。

 ちょうどその時、控室に颯爽と(?)佐々木勇気八段と岡部怜央六段が訪れた。王将戦の特別協力であるスポーツニッポン新聞社「スポニチ」の動画に出演するのだという。

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「勇気くん、いいところに来た」

 2人を継ぎ盤の前に座らせ、検討した手順を伝える。すると佐々木が「すさまじい踏み込みですね。あれ? 後手がきついのか」と言い、「岡部先生、何か(受けは)ないんですか?」と振るが、岡部も「角をさばかれてしまうのがきついですね」と同意見だ。

佐々木勇気八段が控え室に来訪

 だが、藤井はなかなか指さない。佐々木は「間違いなくこの順を読んでいて、すべてを読み切るつもりです」と断言した。そしてモニターに映る永瀬を見て、厳しい表情でつぶやく。

「永瀬さん、苦しそうにしていますね」

 佐々木は永瀬と同世代のライバル。小学生の頃から長年戦い合っているだけに、肌でわかるのだろう。

 皆、それぞれの仕事に戻るため控室を後にし、再び屋敷と私が2人で検討を続ける。

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次の記事に続く 敗れた永瀬は「どれも有力なんです」と嬉しそうに言い、藤井も笑顔で…フルセットにもつれた激戦の後、対局室では「まさかの感想戦」が行われていた

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