古代ギリシャの哲学者たちは、体育を知性の訓練と同等に重んじていた。健やかな身体なくして、健やかな精神は生まれない。その思想は2000年以上の時を経て、いまなお医学と哲学をつなぐ言葉として輝いている。
その後の疫学研究は、運動が心臓病だけでなく、糖尿病、認知症、さらにはがんに至るまで、多くの慢性疾患を予防することを次々と明らかにしてきた。運動は「がん活」において、まさに食事と並ぶ両輪の輪なのだ。
大規模調査が示す「驚きの健康効果」
2016年、アメリカとヨーロッパの研究者によって行われた約140万人の大規模解析では、運動量の多い人は、食道がんで0.58倍、肝臓がんで0.73倍、肺がんで0.74倍、大腸がんで0.84倍、乳がんで0.90倍と、幅広いがんでリスクが下がることが示された。
この研究は、米国国立がん研究所(NCI)が中心となり、欧米・アジアを含む複数の前向きコホート研究を統合したプール解析で、対象は12の前向き研究から集められ、追跡期間も平均で10年以上だった。
評価された身体活動は、職業にともなう活動量だけでなく、余暇における中強度から高強度の運動までも網羅された。つまり「仕事で体を動かすか」「余暇で運動するか」という区別を超えて、身体を動かす時間と強度をすべて加算し、がんリスクとの関連を検証したのである。
解析では年齢、喫煙歴、飲酒、食事内容、BMIといった交絡因子が統計学的に調整された。その結果、「活動量そのもの」が、独立した予防要因であることが裏づけられた。特筆すべきは、肺がんや肝がんのように従来は生活習慣の影響が複雑と考えられていた部位においても、身体活動の多い群で有意にリスクが低下していた点である。
「1日15分」の運動で寿命は3年延びる
さらに、台湾で行われた40万人以上を対象にした10年以上の追跡研究では、一日にわずか15分の軽い運動でも寿命が3年延び、がんの死亡リスクは14%低下することが明らかになった。