『ザ・ブライド!』
日本の映画ファンはラッキーだ。演技者として最高に乗っている状況にあるジェシー・バックリーの新作を、立て続けに観ることができるのだから――。『ハムネット』に続いて彼女が主演した作品だ。日本での公開はこちらが一週早いので、制作順からすると逆になっている。
筆者は試写で『ハムネット』に感服した後で本作を観たのだが、度肝を抜かれた。主演がジェシー・バックリーであるにもかかわらず、彼女がどこに映っているのか、しばらく気づかなかったのだ。それほどまでに、見た目だけでなく演技のスタイルも、『ハムネット』と全く異なっている。
本作の舞台は、ギャングが支配する1930年代のシカゴ。孤独に耐えられなくなった「フランケンシュタインの怪物」は事故死した女性の死体を蘇らせ、自らの伴侶とした。ジェシー・バックリーが演じるのは、その「フランケンシュタインの花嫁」。
このキャラクターが際立っている。とにかく自由奔放で、フランケンシュタインはそれに従うばかり。ギャングをも翻弄するその暴れっぷりに鬱屈を抱えた女性たちも感化され、社会全体を変革するようなムーブメントを巻き起こしていく。
怪物を演じるクリスチャン・ベールが抑え気味の演技で孤独やコンプレックスを表現する一方、ジェシー・バックリーはとにかくハイテンション。はっちゃけまくる。『ハムネット』が抑制した中で喜怒哀楽を伝える「静」の演技なら、これは徹底した「動」。スクリーンの中を躍動しまくる姿がとにかくカッコいい。
この2本は、是非とも続けて観てほしい。あまりの演技の幅、演じられるキャラクターの幅に感嘆することだろう。同時期にこれだけの幅を演じ分けてのけたのは、1980年の『二百三高地』で乃木将軍を演じた直後の82年に『鬼龍院花子の生涯』で鬼龍院政五郎という全く異なる人物像を演じた仲代達矢くらいしか思い浮ばない。
続けて観ると、そのレベルの「歴史に残る名優」が誕生しようとしている、まさに決定的なタイミングを目に、そして心に焼きつけることができる。
『ザ・ブライド!』
監督:マギー・ギレンホール/出演:ジェシー・バックリー、クリスチャン・ベール、ピーター・サースガード、アネット・ベニング、ジェイク・ギレンホール、ペネロペ・クルス/2026年/アメリカ/127分/配給:東和ピクチャーズ、東宝/©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved./公開中
