『俺たちのアナコンダ』
最後の一本は、一転して気楽に楽しむことができる。人生の壁にぶつかった中年たちが、失いかけていた夢と情熱を再び取り戻そうと奮闘するコメディ映画だ。
そう聞くと、ありきたりのドラマに思われるかもしれない。が、そんなことはない。彼らが取り組むのは、1997年に公開された映画『アナコンダ』のリメイクなのだ。アマゾンの奥地で巨大な蛇に襲われる撮影隊を描いたパニック映画は、多くのボンクラたちの胸をときめかせてくれた。
主人公たちもまた、そうだった。俳優としてうだつの上がらないグリフ(ポール・ラッド)は、幼馴染で今は結婚式用ビデオの撮影監督をしているダグ(ジャック・ブラック)を誘って自主映画の制作を始める。その企画は、彼らが愛してやまない『アナコンダ』のリメイクだ。そして、仲間たちを引き連れアマゾンの奥地へ向かった彼らを待ち受けていたのは、本物のアナコンダだった――。
ふざけた映画のように思われるかもしれない。もちろん、思わず「バカじゃねえの!」と突っ込みたくなるような場面は連続する。物語も詰め込み過ぎで、途中はひたすらカオスが続く時間もある。ただ、そうした部分もひっくるめて愛しくなるほど、楽しい。
ダメ中年同士のペーソスに富んだセリフの応酬は最初から笑わせてくれるし、近年では不謹慎と捉えられかねないギャグ描写は「ハリウッドのコメディはこうでなきゃ」と思わせてくれる。そして何より、『アナコンダ』に賭ける彼らの情熱に打たれるのだ。よく考えるとそこまで命がけになる作品とも思えない。だが、だからこそ、その異常なまでの愛情に心から応援したくなってくる。
また、パロディ的な作品だからといってパニック映画としての演出も決して手を抜いていない点にも好感が持てた。どこから襲ってくるかわからない大蛇の恐怖はきちんと描いているため、いかにして逃げるのかという場面にサスペンスが生まれる。それでいて、逃亡の手段が奇想天外だったりするので、緊張感と脱力感のギャップの連続により全く飽きさせない。
観客も『アナコンダ』を観ている前提で作られているので、事前に観ておいた方が――特に終盤の展開は――より楽しめる。
『俺たちのアナコンダ』
監督:トム・ゴーミカン/出演:ジャック・ブラック、ポール・ラッド、スティーブ・ザーン/2025年/アメリカ/99分/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/公開中
