「絶対にわからない場所に埋めた」――。不倫相手の女子大生を殺害した大学助教授は、巧妙な偽装工作で犯行を隠し続けた。しかし、その果てに待っていたのは、妻と幼い娘を巻き込んだ“一家心中”という最悪の結末だった。

 なぜ男の暴走を誰も止められなかったのか? 歪んだ愛と自己保身が招いた事件の全貌を、鉄人社の新刊『高度経済成長期の日本で起きた37の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

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不倫相手が「悪性リンパ腫」に

 一方、妻は夫と不倫相手との関係を以前から把握していたようで、2人の密会現場に子供を連れて乗り込んだこともあった。このとき、気の強い教え子は妻の前で開き直り、女同士で言い争う。

 まさに修羅場だが、当の大場は娘を抱え、ただうろたえるだけだったという。

 どちらかといえば、意志が弱く、恩師や友人・知人に依存しながら人生を歩んできた大場にとっては、不倫相手の教え子は、これまでの女性と違い簡単にあしらえるような女性ではなかった。夫の浮気に悩み情緒が不安定な妻の手前もあって、大場は不倫相手との関係を深刻に悩み始める。そんなとき、思わぬ出来事が起きる。

 教え子の女性が悪性リンパ腫の一つであるホジキンリンパ腫を患い、療養のため実家の甲府に戻ってしまったのだ。当然ながら会う機会は減り、そのまま関係が消滅してもおかしくなかった。しかし、大場の中ではすでに一つの決意が固まっていた。

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 1973年7月19日、定期治療のため彼女(当時24歳)が上京し、通院していた慶應大学病院を訪れる。その後、新宿で買い物をしてから、獨協大学に通っていた弟と一緒に東京都北区の親戚宅に宿泊。そして翌20日、「友達に会うので遅くなる」と出かけたのを最後に行方を絶つ。

 家族が心配するなか、23日になって彼女から〈2週間ほど旅行します。8月4日には戻ります〉と記した手紙が実家に届く。消印は新宿郵便局で21日に投函されたものだった。