王道・ロングセラー・実用系
生活に溶け込み、日本のインフラとして機能した「原チャリ」の良心といえるグループだ。
ホンダ:スーパーカブ50
「1958年から続く、世界を変えた日本の発明品」
1958年の誕生以来、累計1億台以上が生産された「世界のカブ」である。その設計の凄まじさは、蕎麦屋の出前持ちが片手で運転できるよう、左手側にクラッチレバーを置かない「自動遠心クラッチ」を採用した点にある。
「カブは単なる乗り物を超え、日本の食文化や物流を支えるインフラとして機能しました。もはや、これほどまでに生活に密着し、かつ壊れない工業製品は現れないでしょうね」(呉尾氏)
現在、初期型のC100などはマニア間で非常に人気が高く、極上車は60万円を超える価格で取引される。
ホンダ:モンキー
「日本人の発音まで変えた、レジャーバイクの象徴」
1967年に登場したレジャーバイクの代表格。元々は多摩テックの遊具だったものが市販化されたというユニークな出自を持つ。ハンドルを折りたたみ車載できる構造は、当時のアウトドアブームに合致した。
「モンキーがあまりに有名になったため、日本での『Monkey』の発音が動物園の猿を指す場合でも、英語本来の音(マンキー)よりホンダの製品名(モンキー)に近い発音で定着したほどです」(呉尾氏)
趣味性が高く、カスタムパーツが豊富で、本体価格を遥かに超える改造費を投じる愛好家も多く、「自分より高い“盆栽”(=鑑賞を目的としたバイク)」と自虐するモンキー乗りは少なくない。
ホンダ:タクト
「スクーターブームの先駆者、市民の足としての完成形」
日本にスクーターを定着させた重要モデル。1980年登場。それまでの「原動機付自転車」のイメージを刷新し、老若男女が気軽に乗れるクリーンな乗り物へと変えた。
「初期型には盗難防止の鍵付きボックスが標準装備されるなど、生活に寄り添ったアイデアが満載でした。後にディオが登場するまで、ホンダの屋台骨はこのタクトで、初期モデルのコンパクトでキビキビとした走りは、ライバル他社を圧倒していました」(呉尾氏)
ホンダ:ディオ
「ジョグとのパワー戦争を勝ち抜いた、スクーター界の絶対王者」
1988年に登場したディオは、タクトの保守的なイメージを覆し、若者向けのスポーティな路線を確立。呉尾氏は「ディオの登場により、スクーターは単なる移動手段から若者のステータスへと進化した」と振り返る。
特に、ライバルであるヤマハ・ジョグとの熾烈な販売合戦は、街中の信号待ちをドラッグレースに変えてしまうほどの熱狂を生んだ。最終的にはホンダとヤマハが業務提携し、かつての宿敵であったジョグの現行モデルが、ホンダからのOEM供給によって生産されるという、当時のファンからすれば信じられない結末を迎えている。



