『パッチギ!』での沢尻の演技は高く評価され、日本アカデミー賞など主要映画賞で新人女優賞を総なめにする。このあと、難病で若くして亡くなった実在の女性の日記をもとにしたドラマ『1リットルの涙』(2005年、フジテレビ系)に主演し、さらに知名度が拡大した。

「別に女優でやっていこうと思ってるわけじゃない」

 ただ、彼女自身は当時、《この先、別に女優でやっていこうと思ってるわけじゃないんです》(『週刊文春』2005年11月17日号)、《私は別に今も自分を女優だとは思ってないし、生きていれば考えが変わることもあるから、将来、全然違う職業に就いていることもあるかもしれない。ただ、今は演技を通して自分が成長したり影響を受けたりすることがすごく面白い》(『anan』2005年11月9日号)という発言をことあるごとにしており、俳優という職業への執着は薄かったとうかがわせる。

 それでも演技に対しては、さまざまな作品に出演するうちにどんどん貪欲になっていった。『間宮兄弟』『シュガー&スパイス 風味絶佳』『オトシモノ』『天使の卵』『手紙』と出演映画5作が公開された2006年のインタビューでは、《女優としてのヴィジョンはまだないけど、女としてはいい女になりたい》と言いつつ、《私はこれからも映画でやっていくつもりです。今までにないような役なら、何でもやってみたいですね》と意欲を示した(『キネマ旬報』2006年9月下旬号)。

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映画『手紙』で共演した(左から)玉山鉄二、山田孝之と沢尻エリカ ©文藝春秋

 上記の映画のうち『手紙』では玉山鉄二、山田孝之とともに殺人事件の加害者家族を演じた。出演者3人そろって取材に応えた際には、《私は3つの時代を演じました。演じ分けも楽しかったのですが、外見を作りこんでいく作業も、面白かったですね。監督とは常に話し合って、私の意見も言わせてもらえました》と話している(『CREA』2006年12月号)。

 しかし、翌2007年公開の『クローズド・ノート』で教師を目指す大学生の主人公を演じるにあたっては、彼女は次のように語っているように、役へのアプローチの仕方をガラリと変えた。

《今回は役作りや私の意見を入れ込む必要はないと感じたんです。自然に現場に入って、行定(ゆきさだ)監督の要望に応えることがベストだと思いました。そういう意味では、これまでのアプローチとは全然違いますね。監督は“このシーンはこういう感じだから、こういうものが欲しい”と非常に具体的な指示をしてくれたんです。ただ、私がそれを自分なりに解釈して芝居を出すものと、監督のイメージには絶対に違いがあるんですよ。でも“これもありなんだな”というお互いに認知できるポイントが、やっているうちに生まれてくる。最初は先が見えていない状態でやりながら、化学変化のようにひとつの表現が見えてくるというのは、演じていて面白かったですね》(『キネマ旬報』2007年10月下旬号)