“全てをさらけ出した”熱演
沢尻はもともと普段の生活にまで役を引きずるタイプだったが、本人に言わせると、りりこには特にのめり込み、周りの友人にも役になりきったまま怒ったこともあったようだ。それでものちに振り返ってみると、《あの作品に出合えて、偽っていた自分が壊れました。私の全てをさらけ出すことができたし、素のままでいいやと思ってから、ずいぶん楽になりました》と語っている(『Numero TOKYO』前掲号)。
ただ、監督の蜷川によれば、撮影中の沢尻は《控え室にいた時もずっとりりこだった。思い返してみると、撮影の現場でもほとんど誰とも喋っていない。例えば共演者とも、常に距離をとってやっていましたね》といい、いちどだけ彼女と飲んだときには、《本当は皆ともっと話したいし、こんなにいいスタッフとキャストとできて幸せだと伝えたいけど、今、私はこの役をやっているので和気藹々とできない》と打ち明けられ、悲痛さを感じずにはいられなかった。それ以外にも《自分の中の感情と闘いながら彼女はやってたんだなあって思うことがたくさんあります》と蜷川は振り返る(以上、引用は『キネマ旬報』前掲号)。
こうして『ヘルタースケルター』は完成し、2012年7月に公開された。これと前後して、同年2月には動画配信サイトの連続ドラマ『L et M わたしがあなたを愛する理由、そのほかの物語』(BeeTV)、4月には地上波の単発ドラマ『悪女について』(TBS系)と主演作があいつぎ、沢尻は約5年ぶりに俳優業に復帰したのだった。そこからしばらく順調な時期が続いたものの、やがて彼女はさらなる試練を味わうことになる。(つづく)
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。
