軽井沢駅前からタクシーに乗って、人通りの多い旧軽や中軽とは反対の東側に向かってもらう。通るのは、国道18号の旧道だ。すぐに道は急カーブが続く九十九折りの山道に入る。乗っているタクシー以外には、ほとんどクルマもバイクも通らない。

 以前、同じ場所に来たときには、ツーリングのバイクがいくつも駆けていた。そのときは真夏だった。山の上には寒さが残るこの季節は、まだツーリングのシーズンではないということなのだろうか。

 

 などと考えながら、九十九折りの山道をタクシーに揺られることおよそ20分。国道沿いに少し開けた駐車場とトイレが設けられた場所に着いた。

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 ここでタクシーを降りて、国道脇に備えられている急な階段を登る。登った先にあるのが、信越本線の廃線跡、そして廃駅でもある熊ノ平駅だ。

軽井沢の奥地に眠る「峠越えの廃線跡」をたどる 撮影=鼠入昌史

軽井沢の奥地にある“峠越えの廃線跡”

 まだ旅のはじまりだというのに息も絶え絶えになりながら階段を登り切ると、そこには古いレールと古いホーム、そして使われていない変電所。さび付いたレールの先はトンネルへと続いている。人の気配のほとんどない、碓氷峠の山の中。

 

 熊ノ平駅は1893年、信越本線横川~軽井沢間の開業と同時に信号場として設置され、途中駅への昇格・信号場への降格を挟んで1997年の廃止まで活躍した。

 ほんの30年前には現役だったとは思えないほど、静まり返った廃駅から群馬県は安中市の横川駅まで、6kmちょっとの峠越え廃線跡の旅のはじまりである。