「一生かけてやりたいいい仕事」「楽しまなきゃ損だなと思う」
村田 けっこういい仕事だと思います、料理人って、すごく。もちろん大変です。肉体的にも精神的にもめちゃめちゃ大変ですし、70歳になっても同じような状態で肉体的にやっていけるのかっていったら厳しい部分もありますけど、それを差し引いても……。
笠原 楽しいよね。一生かけてやりたいいい仕事だよね。
村田 はい、いい仕事です。
笠原 僕なんてもう、半分娯楽だと思い始めてる。
村田 娯楽ですか。
笠原 そう思っといたほうがいい。
村田 最高ですね。
笠原 自分がやりたい料理、これおいしそうだなって思った料理をつくってね、それをお客さんに喜んでもらえてね。
村田 おいしかった、ありがとうって言われて。
笠原 そうそう、お礼まで言われて、お金までいただけて。俺は最近はそういう境地にいますよ。楽しまなきゃ損だなと思うし。
村田 笠原さん、料理人歴は。
「10年で一人前。20年くらいやってると…」
笠原 18歳からだから35年くらいか。でも、まだまだだと思いますよ。剣客っていうじゃないですか、剣の達人。僕が好きな池波正太郎先生の名著『剣客商売』に、10年修業したらちょっと自分でも強くなったと感じるって書いてあるんです。それを料理人に置き換えると、10年で一人前。10年修業するとちょっと自分でもつくれるようになって、ちょっとうまくなったなって。20年やると今度はちょっと見ただけで、相手がどれくらい上手いかがわかる。たしかにわかるんですよ、20年くらいやってると。仕事を一緒にすると、この人上手だなとか、センスがあるなというのがわかる。30年やるとね、自分が下手だなーと気づく、と。
村田 笠原さんはいまその境地ですか。
笠原 とくに50歳を過ぎてからね、自分の料理に対して「わーだっさー」とか、下手くそだなって思うことが本当に多いわけですよ。30年以上やって、これもできなかったとか、やってきたわりには下手だなとか、こんなことも知らなかったのかとか。決して否定的な意味じゃなくて、自分のいろんなことに気づき出す。自分がだめだなっていう時期をいまやってるところだと思うんだけど、これが40年やるとどうなるかっていうと、わけがわかんなくなるらしい。
村田 あははは。
笠原 だから俺、その境地も早く見たい(笑)。面白そうじゃん。40年やるともうわけわかんなくなるって。すっごい楽しいんじゃないかなって。
村田 なんでも思うようにできるようになるから、ある意味枷がなくなって。
笠原 そうそうそう。大将は50年以上だから、もう違う世界にいると思います。わけがわかんない時期も終わって、別の世界に。

