正解がないところが料理のいいところなのかなって
村田 僕は料理人になって10年弱で、なんかできた気になってるけど実際になにもできてないんですよね。たぶん、見よう見まねだと思います。その真似が真似だとばれないようにやっている、正直いうとそんな感覚だと思います。一から自分でなにかをやれっていうテーマをもらうこともあるんですけど、なんとかかんとか捻り出しますけど、ものすごい疲れたうえに、最終的にこれでよかったのかなって。ぎりぎりまで迷った挙句、締め切り終わったあともずっと悩みます。これが正解なのか、これでよかったのかとか。
笠原 真似だって技術がいるじゃないですか。料理は正解がないし、そこが面白いところだし、救いだなって思うところだよね。100メートル走みたいに、この人はいま100メートル何秒で走ってるって数字でみえる世界だともう全員がわかっちゃうけど、料理はそれがないのがいいなって。べつに、世界一この人が料理がうまいって、そういうのはないじゃん。
村田 あー、比べようがないと。
笠原 いろいろガイドブックだなんだあるかもしれないけど、正解がないところが料理のいいところなのかなって思うんだよね。だからもっとおいしい料理をつくろうと思ったらつくれるんだろうし、これとこれを混ぜたから不正解ではないし、正解ではないかもしれないけども、そういう余地の部分があるからやってて楽しいし。
働いてくれている人の労働環境のケアができる体制をつくれたら
――おふたりとも、経営者という側面もお持ちですよね。
笠原 知晴さんにお聞きしたかったのは、全然まだ大将も元気だし、当分いらっしゃるだろうけど、完全に自分がばーんと4代目としてやり出したら、ここはこう変えてやりたいとか、そういうのはある?
村田 具体的に料理の献立とか、味をどっちに持っていくとか、そういうことよりは、お店自体の土台というか、枠組みというか、座組は少し、現代に合わせていってもいいのかなっていう部分はありますね。たとえば働いてくれている人の労働環境とか、結婚して子どもができてライフステージが変わってきている子たちもいれば、体調を崩す先輩もいるし、そのあたりのケアができる体制をつくれたらと思います。みんなが気持ちよく働いて、ハッピーになってほしい。ハッピーな気持ちで働かないと、たぶんお客さまをハッピーにすることはなかなか難しいので。
笠原 ほんと、そうなんだよねえ。自分たちが楽しくないとね。
――豚汁のご縁から実現した今回の対談ですが、最後にひとつ、いま食べたいものを教えてください。思い浮かんだままに。
笠原 食べたいもの? 俺は蕎麦が食いたいな。もり蕎麦。営業前の時間はね、蕎麦くらい食っとくのが一番いい。胃ももたれないし。
村田 僕は、おにぎり。にぎりたてのおにぎりが食べたいですね。
文 中岡愛子
撮影 志水隆/文藝春秋
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