年齢を詐称し、写真を加工し、押しのけてカメラに映りに行き、嫌われてはまたサボって海に行く。

 やがて彼女は『昼めし旅』(テレビ東京)の常連旅人として、初対面の一般家庭の昼ご飯を覗かせてもらう姿で、画面の中に頻繁に現れるようになる。人懐っこさと幸せそうに食べる表情が番組カラーにぴったりで、構えない佇まいがそのまま画面に残った。

 そして2010年代後半からは、ドラマ出演が増えていく。だが、その「引っ張りだこ」のされ方がまた独特だった。

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 典型的なのは、バカリズム脚本『ホットスポット』(日本テレビ、2025年)で演じたホテルの清掃員だろう。初回でテレビを盗んでクビになる、という出落ちのような登場をしておいて、後の回でスナックに再登場。元同僚(市川実日子)が目の前にいると気づきながら、悪びれもせず泥棒姉妹アニメの主題歌「CAT'S EYE」を朗々と熱唱してみせる。

中学1年のときの野呂佳代 本人インスタグラムより

 同じくバカリズム脚本『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ、2023年)で演じた、地元の同級生「ごんちゃん」もそうだ。金髪で足にはタトゥーという派手な見た目の同級生が、成人式後のカラオケで朗々とAIの「Story」を歌い上げる、絶妙にシュールな手触り。

見栄も嘘もある“小人物”の感触

 肝心なのは、彼女が演じる人間くささが、嘘や見栄もちゃんと含んでいることだ。窃盗をしておいて元同僚の前でしれっとキャッツアイを歌う。金髪女性が場違いに感動ソングを真剣に歌い上げる。本人がアイドル時代に貫いていた「履歴書を盛る」「カメラを押しのけて映り込む」「サボって海に行く」と同じ、見栄も嘘もある“小人物”的な感触が画面の中の役にもにじむのだ。

 ただし、彼女が「コメディだけの人」だと思っていると裏切られる。たとえば医療ドラマ『アンメット』(フジテレビ、2024年)で演じたベテラン麻酔科医は、若い主人公をあたたかく見守る、画面の重心の役。

 共演の若葉竜也から「かっこいいっすね」と評されていた。コメディでの脱力感と、シリアスで沈める落ち着きの両方を往復できる俳優は、そう多くない。芝居の幅が広がっていなかったら、大きな役には手が届かなかっただろう。