こうして並べてみると、改めて気づく。野呂佳代という存在は、アイドル→タレント→俳優という、なかなか成功例の少ないジョブチェンジを、現在進行形で続けている、極めて稀な事例なのだろう。アイドル時代に積んだ場の読み、バラエティで身につけた人間観察を活かしつつ、俳優としての足元を着実に固めている。

憧れでもなく、カリスマでもなく、市井の女性

 そんな彼女が出演しているのが、現在放送中の『銀河の一票』の月岡あかり役だ。

 憧れの対象ではなくカリスマでもない、夜の街でスナックを切り盛りする市井の女性。野呂本人の「壁にぶつかり、悩み、都度考えながら、生きる道を探してきた」歩みが、そのまま、あかりという人物の佇まいに沁みている。

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©時事通信社

 物語の中で、星野茉莉(黒木華)が街でたまたまあかりに出会い、彼女を都知事候補に擁立しようと奔走するところから動き出す。茉莉が描く理想は「上から導く」存在ではない。あかりに向けて茉莉が懇願するように語る言葉――「上じゃなくて、前です」「同じ地面に足をつけて、同じ景色の中で、同じ気温を感じながら、同じ道を歩くんです」。最初は突拍子もない話として保留したあかりも、やがてその思いを引き受ける。

 あかりが店を継ぐことになった出会いは10年前、死を選ぼうとして屋上に立っていたあかりに、当時のスナックのママ(木野花)が声をかけたこと。「生きてると、甘いことしょっぱいことあるよね、どっちかが続いちゃったりしてさ、順番に並んでくれてたらいいのにね」。交互に来てくれれば人は耐えられる。だがどちらかが続いてしまう時、人は一人では破綻しかける――。

 そんなママ自身もまたその時、不幸が重なって死を選ぼうとしていたのだということが後にわかる。互いの「闇」が、互いの「光」になり、後に認知症で施設に入った先代ママに代わって、あかりがその店を守り続けている。野呂佳代がアイドル時代の総スカンも、バラエティでのイジられの時間も、すべてを地続きに連れて生きてきた歩みと、不思議なくらい呼応している。