1984年6月、カリフォルニア州の高級住宅地で悲劇は起きた。

 スクールカースト上位の人気者である15歳のカースティンは、憧れの会員制クラブの「秘密のディナー」に誘われ、迎えに来たオレンジ色のボロ車に乗り込んだ。が、彼女は数時間後に自宅の玄関先で何者かにメッタ刺しにされてしまう。

 倒れる少女、悲鳴、血まみれの手形、そして猛スピードで走り去る謎の女――。目撃者がいたにもかかわらず、捜査は難航を極めた。果たして、少女を襲った不気味な殺人鬼の正体とは。アン・W・バージェス氏他による『怪物の顔 快楽殺人者のプロファイル』(大和書房)の一部を抜粋して紹介する。

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スクールカースト殺人事件

 1984年6月23日、カリフォルニア州オリンダ郊外の高級住宅街で、15歳のカースティン・Cは自宅で1人、迎えの車を待っていた。地元では“ボビーズ”の名で知られる、〈ボボリンクス〉という会員制クラブへの秘密入会ディナーに連れていってもらうためだ。

 ボビーズに入会できることは、彼女にとって大事件だった。会員になれば、高校の狭い交友関係よりはるかに広がりのある社会的ステータスが手に入る。だから、少し前にカースティンの母親が電話を受け、正体不明の女性から、ディナーは秘密裏におこなわれるが、午後8時半にカースティンを迎えに行くと言われたとき、家族みんなが大喜びした。

 その夜、カースティンの両親と12歳の弟は野球観戦しながらのパーティーに参加するため外出し、カースティンは1人で車が来るのを待っていた。午後8時20分、「うまくいくといいね」と幸運を祈る母親から電話がかかってきた。直後に車まわしからクラクションが聞こえ、カースティンは急いで家を出ると、オレンジを基調にしたツートンカラーのおんぼろのフォード・ピントの助手席に乗りこんだ。

 ピントは近所の長老派教会まで走り、その前で止まると、2人を乗せたまま30分近く停車していた。やがてカースティンはおもむろに車から降り、500ヤード(約450メートル)ほど歩いて、袋小路の行き止まりにある家族ぐるみの付き合いのアーノルド家を訪ねた。

 ミセス・アーノルドがドアを開け、カースティンが状況を説明するのを熱心に聞いた。

「友だちのふるまいがなんだか妙で、私をどうしても家に送ってくれないんです」

 そして、もし可能なら、両親に電話させてもらえませんかと頼んだ。