目撃情報を得るも行き止まる捜査
そういう騒ぎの真っただ中に、カースティンの家族が帰ってきた。わめき声で混乱していた現場は一転してしんと静まり返り、やがて救急車後部のストレッチャーに横たわっている娘に家族が気づくと、またわめき声が舞い戻ってきた。娘は血だるまだった。救急隊員は後部ドアを閉め、サイレンを響かせて、野次馬の群れを貫いて走り去った。カースティンは近くの病院に運びこまれたが、1時間後に死亡が確認された。午後11時2分だった。
捜査はすぐに始まった。最大の手がかりに最も重点が置かれた。犯人が乗っていたフォード・ピントである。警察は750台以上の黄色とオレンジのツートンカラーのピントを確認したが、カースティンを殺した犯人とつながる明確な証拠をつかめなかった。
そこで警察はさらなる目撃者を探した。見つかったのは3人。1人目はアーノルド一家の近隣住民で、夜の散歩に出かけたときに袋小路に停まっているピントを見たと証言した。運転席には女性が乗っていて、ひどく動揺しているように見えたので、窓に近づいて大丈夫ですかと尋ねたという。運転手は彼を追い払うしぐさをし、「平気よ、放っておいて」と言った。2人のやり取りはそれだけだった。
2人目と3人目は若いカップルだった。彼らも教会の敷地に車を駐車していた。そこは一帯の高校生のたまり場になっていて、みんなで集まって騒いだり、マリファナを吸ったり、セックスをしたりする場所だった。2人は、ピントがやってきて、そこで35分ほど停まっていたのを見た。ただ残念ながら、2人はカースティンのことも運転手のことも認識できず、車内の様子もよく見えなかったという。
「事件はここで行き止まりになっている」
ウォーカー(注:新たに行動科学課に配属されたプロファイラー)はファイルの最後のページをめくり、テーブルを囲む一同を見渡した。
「ほかになんの手がかりも見つからないまま数か月が経った。今や捜査はストップした。とりあえず、検死医の報告書を次に見せておきたい。刺創は5か所、右の前腕に防御創が1か所。刺創のうち2か所は被害者の背中を深く貫いていて、右肺と横隔膜に達している」
ウォーカーはプロジェクターのスライドを2、3枚急いで先に送った。
「それから司法解剖の報告書。これらの写真から、刺創の1か所は肝臓を深く傷つけているのがわかる。そして胸の別の2か所の傷は深さ15センチほどで、左肺を貫いている。被害者は出血によって窒息死したと思われる。身体的および性的暴行の形跡はない」
「わかった。質疑応答を始めよう」
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凄惨な遺体の記録を映し出す中、前代未聞の「女性容疑者」をめぐる白熱の議論が幕を開けた。残されたわずかなピースから、彼らはいかにして犯人の心理を読み解いていくのか。
