「少なくとも、怠けていたとか、努力が足りなかったとかいう話ではないと思います。脳の特性による偏りで不得意なことがあり、それが仕事の効率に影響していた可能性はあると思います」
「治るんですか?」

 押見さんが恐る恐る尋ねる。

発達障害は治るのか?

 発達障害は完全に治療できるものではない。私の経験だと、子どものころに症状が色濃く出ているケースは、薬で症状が改善することが多い。

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 だが、大人の場合は薬だけではうまくいかない。仕事で求められるレベルは高く、薬で不注意や衝動性が軽減できても、「まわりと同じレベルで働きたい」という希望を実現することは難しいケースが多い。

 私はこのことを押見さんに説明した。押見さんは表情を変えず、黙って聞いていた。

 患者によっては業務内容を変更したり、仕事自体を変える選択肢を提案する。

 押見さんには診断結果とその特性を会社の上司に報告してもらい、それまでの混載梱包(マルチピッキング)業務から、ラインでの検品作業へと変更してもらうことになった。

 人は誰しも発達障害の特性を少なからず持っている。診断される人とされない人の違いは特性の“濃さ”だ。特性が真っ黒なら、生活に支障が出て、早期に発達障害と診断される。特性が薄ければ、症状と呼ばれず、その人の個性と捉えられる。

「障害」と「個性」の違いとは

 私自身、非常にマイペースで協調性に乏しく、自分の決めたスケジュールどおりに物事が進まないとイライラしてしまう。毎朝起きる時間は同じだし、ほぼ毎日同じ服装だ。これはASDの「こだわり」「急な変化に弱い」に近い特性だと自己分析している。ただ、この程度の“濃さ”なら生活に支障が出ることはない。

「障害」とは「個性」の延長線上にあるのかもしれない。

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