彼女の供述「犯人は──」

 かねてから洋裁の学校に通いたいと考えており1950年の12月に上京した。ホテルの住み込みで働いて学費を稼ごうとしたが、安月給だったので仕事を辞め、その後は金目当てに夜の街頭で客を拾っていた。その中の1人で翌年2月19日夜に新宿のガード下で知り合った山口に洋裁学校の話をしたところ、「うちの店で女性店員を探している。理由を話せば、洋裁学校にも通わせてくれるさ」と言われた。

 そこで21日に店主と面談し採用された。住み込みで働き始めたその日の朝方4時ごろに大きな音で目が覚めたところ、部屋に入ってきた山口に2階に連れて行かれ「この前、おまえと遊んだときの不足分だ」と1千円を手渡されたうえで「朝の9時に信用金庫で14万円を下ろして、新宿で待っていてくれ。このことは誰にもしゃべるな。言うとおりにしないと、おまえをぶっ殺す」と、通帳、印鑑を渡された。

 盗品だとは察したものの、殺人とは予想もつかず、1千円に目がくらんで引き受けてしまった。印鑑が届け出印と違うことを信用金庫の職員に指摘され、以前、宿泊したことのある新宿の旅館に向かった。

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 八宝亭に戻らなかったのは山口が怖かったから。その後、新聞でモンタージュ写真

 を見た家族から自分が疑われていることを知らされ、義兄のもとに身を寄せた。自ら名乗り出なかったのは、単に怖かっただけ。犯人はコックさんです──。