世代に特有の苦しみがあることを理解せよ

――『理不尽仕事論』を読んでいる中で、「闇堕ち」というキーワードも印象的でした。ビジネスシーンにおいて氷河期世代や中間管理職が「罰ゲーム」と言われるような苦しい状況におり、その連鎖をZ世代は受け付けないという対立構造の中で、「闇堕ち」を防ぐにはどうすればいいか、アドバイスをいただけますか?

坂井風太さん

坂井 大きく2つあって、まず1つは「自分だけが辛い目に苛まれている」と思い込まないこと。氷河期世代には就職難の苦しみがありましたが、今のZ世代からすれば例えば「マンションが高すぎて買えない」という苦しみがあります。その世代にはその世代の苦しみがあることを理解しなければいけません。

 もう1つは「理論を知る」ことです。例えば、闇堕ちには「権力観」という理論が関わってきます。権力観には「私的権力観」と「公的権力観」があり、闇堕ちする人や横暴になってしまう人は、自分の意見を通すために権力を欲する私的権力観を持っていることが多いんです。一方、公的権力観は「ノブレス・オブリージュ」にも近く、「自分が上の立場ならみんなの模範にならなければいけない」「若手に見せて後ろめたくない姿勢か」を考えます。これを知っていれば、誰をリーダーにすべきか分かりますし、自分がリーダーになりたいと思った時の動機が私的権力観だったら、「危ないかも」と気づくことができます。

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闇堕ちを防ぐには「誰かのおかげ」を思い出せ

――坂井さんご自身は、どうやって闇堕ちを防いでいるのですか?

坂井風太さん

坂井 この本にも書きましたが、私自身は闇堕ちしそうになったら「誰かのおかげを思い出す」ようにしています。闇堕ちする人というのは「誰も助けてくれなかった」という認識を持ちがちですが、自分の人生の節々において、本当は助けてくれた人がいるはずなんです。あの人は何もやってくれなかったと思っても、「あの人のおかげでこれができたな」と思い返す。闇堕ちしそうな時ほど、手を差し伸べてくれた人の存在を忘れてしまっているので、それを思い出すことが大事です。

――うまくいかない時は、どうしても視野が狭くなってしまい「おかげ」までたどり着かないこともあります。普段からの訓練が必要でしょうか。

坂井 私は、職場だけでなく家庭でも実践しています。妻とは結婚して10年くらいですが、今は明らかに喧嘩がないんです。夫婦関係において「妻はこれをやっていない!」と思うことがあっても、「してくれなかったことではなく、してくれたことを数える」ようにすると、やってくれていることの方が多いことに気づき、喧嘩がなくなります。自分で書いたこの本に助けられていますね(笑)。