私だって、最初はマンモグラフィや針生検の結果が出るまで不安で不安でたまらなかった。前にも書いたけど、待ちきれなくて自由診療の乳房専用MRIを受けてしまったくらいだ。それで「がんじゃない」なんて誤診をされたわけだけど。

入院患者役で映画に出演

 闘病中でもパパは仕事を休もうとはしなかった。

 がんになった事実もファンやマスコミには徹底して秘密にしていた。

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 万が一がんだと知られれば、ヤクザや番長など破天荒な役を演じてきた「梅宮辰夫」のイメージに傷がつく。仕事も減ると考えたんだろう。

 闘病中に出演したのが、東映『不良番長』シリーズの番外編みたいな作品の『極道VS不良番長』。

 パパが演じる主人公・神坂弘は、いつもならバイクにまたがって銃を撃ったり、刀を振り回したりする暴れん坊。でも、この作品では、腕と脚にギプスをしてベッドに寝ていたり、車椅子で運ばれたりしているだけ。あえて大怪我で入院中の設定にして乗り切ったとか。

 まるで噓みたいな話だけど、抗がん剤と放射線の副作用が苦しくて、とてもアクションどころではなかったはず。

 パパもすごいけど、がん患者に仕事を入れてしまう東映もすごい。まさに“ザ・昭和の芸能界”って感じ。

「アンナのことは頼む……」

「1か月半ほどで治るでしょう」

 医師からそう言われて治療に臨んだのに、1か月たってもその気配がない。

 左肺の腫瘍は小豆ほどに縮んだけど、影がなかなか消えなかった。

 パパはおじいちゃんに不安を爆発させることもあったらしい。

「お願いだから、隠さずに本当のこと(病状)を言ってください!」

「バカなことを考えるもんじゃない! ちゃんと治るよ」

「おめでとう! 腫瘍はきれいに消えていますよ」

 ママにはがんのことは教えていなかったそうだけど、ママはママで「これは、普通の病気じゃない」と感じていたそうだ。心配で私を抱きながら泣いたこともあったとか。

 

 ある日は、パパが家族団欒の場で、ママに向かって、

「俺に、もしものことがあったら、アンナのことは頼む……」

 なんて、まるで遺言のようなことも言ったらしい。

 それほどまでにパパは追い詰められていた。

 年を越してから精密検査で腫瘍が消えていなかったら、手術するしかないーー。そう主治医に告げられて、パパも覚悟を決めた。