彼女の病状は⋯
「有名人の××になりたい」「世界平和」といった、非現実的な願望がとめどなくあふれ出る誇大妄想、そして話の内容がコロコロと変わって一貫性がない観念奔逸といった症状が出ている。明らかに睡眠不足なのに「眠りたい」という欲求は減り、深夜に彼氏に“鬼LINE”“鬼電”をして関係が悪化している。典型的な双極性障害の躁状態だった。
「ご両親が心配されているように躁状態になっていると思われます」
付き添いの父親に向かって言うと、
「最近は私たちにも大きな声で怒ってきたり、壁やドアを蹴ったりするんです。家には置いておけないです」と肩を落とす。
「私生活にもかなり影響が出ていますし、病状によって彼女の名誉が大きく毀損していると思われます。君島さん、入院しましょう」
機嫌よく歌っていた彼女の表情が曇る。
「ドクター! こんなに元気で入院する必要あります? 私ふだんからよくしゃべるんです。ドクターはふだんの私を知らないですよね。じゃあ異常かどうかなんてわからないじゃないですか!?」
躁状態の本人は「自分は絶好調だ」と思い込んでいるが、このまま放っておけば、彼女の人間関係はどんどん壊れていく。外来治療では難しいと判断し、入院治療に踏み切ることとした。
君島さんの入院から1週間がすぎた。まずは以前から使用していた抗精神病薬を再開したものの、躁状態はなかなか良くならなかった。
「ドクター、待ってました!」