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素行が悪く解雇寸前とはいえ、肩書は警察官。だが、内縁の妻と別れるとなれば、いよいよクビを告げられるかもしれない。
伊藤は今の立場を守るためにも、富美子との別れは絶対避けねばならなかった。一方、富美子は警察を解雇されたら本気で自分の命を奪いに来るかもしれないと恐れた。同居する母や弟のことを考えても、これ以上別れ話はできないとあきらめる。
「売れば金になる」
こうしてずるずると冷え切った同棲生活を送り1年以上が経過した1952年5月7日、伊藤は21時ごろに泥酔状態で帰宅する。が、その日は22時から夜勤が入っていた。
制服に着替えることもままならない状況で、富美子は思わず「どこでそんなに飲んできたの!」と叱責してしまう。これに伊藤は「どこで飲んでこようが俺の勝手だ! 生意気言うな!」と怒鳴り返し富美子に手をあげた。
しばらくしてその場は収まり、富美子は伊藤を寝かしつけた後、彼の上司に電話をかけ「故郷の親戚に事情があり、急遽上京したので9日まで休みます」と連絡する。伊藤を思ってのことだった。しかし、伊藤は酔いつぶれて寝入る寸前、ふと言葉を漏らす。
「捨てるのは惜しい。売れば金になる」
これが何を意味していたのかはわからない。が、富美子は自分が売春婦として売り飛ばされると直感。ついに我慢の糸が切れる。