昭和29年、埼玉県で19歳の女性が殺害され、乳房や下腹部を切り取られるという凄惨な事件が発生した。
逮捕されたのは、女性への執拗な執着からストーカーと化した29歳の男・古屋栄雄。一度も交際経験がない古屋は、ダンスホールで出会ったふみえに一目惚れし、一方的な妄想を膨らませていた。
交際を拒まれ、逃げる彼女を追いかけて埼玉県へとたどり着いた古屋。しかし、どれだけ探しても最愛の人の居場所はわからない。焦燥と狂気に支配された男の殺人衝動は、ついに限界を迎えてしまう――。事件の結末を、鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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事件当日、男は…
1954年9月1日、古屋(当時29歳)は映画館を辞め、ふみえを探し出す決意を固める。埼玉県内にいるものと信じ、至る場所を歩き回った。が、彼女の姿はどこにもない。
そして事件当日の5日を迎える。この日の13時半ごろ、古屋は東武東上線の新河岸駅に降り立った。イモ畑やオカボ(畑に植える稲)畑の広がる入間郡高階村(現・川越市)を歩きながらふみえを探した。
そのうち日が暮れ、駅前の食堂で夕飯。腹が一杯になった後も駅周辺を徘徊した。
