堀田 図録では一層わかりにくそう。

秋田 でも実物の前に立ち、絵の表面をよく観察すると、作家が根気よくキャンバスに絵具を重ねていった様子が想像できるんです。そしてその丁寧な一筆一筆こそが、作家にとっての祈りだったと感じられた。この体感を得られたのは、この絵の並び順があってこそ、でした。

 といっても、展覧会には《夜のカフェテラス》のような目玉作品だけをしっかり見るために行くという、一点狙いも「全然あり」だと思っているんです。展覧会ですべての絵を隈なく見るのは相当な体力と気力が必要ですし……。そもそもどんなに有名な作家でも、作品すべてが傑作というわけではありません。しかし展覧会の目玉になるような人気作品は、その作家の作品の中でも完成度が高いものである場合が多いので。

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秋田麻早子

完成度が高い作品は素人目にもわかる

堀田 その「完成度」とは、絵のどこで測られるものなのですか?

秋田 絶対的な基準があるわけではないですが、構図のよさ、内容と表現が合致していること、文化的・社会的に見ても深く鑑賞でき、その作家らしさが出ていることなど、基本条件は満たされているものが多い。

堀田 あと、人気作は素人目にも、直感的に「何か良い感じ」とわかるものが多いですよね。

秋田 そうなんです。よく、シンプルな現代アートについて「こんな絵なら自分にも描けそう」と言う人がいるじゃないですか。でもある実験(※1)では、プロのアーティストが描いた絵と子どもが描いた似たような絵を並べて、一定数の人に見せたところ、プロの絵の方を良いとする人が多いという、有意な結果が出たんです。一見似たようなものに見えて、しかし実は、多くの人がそのわずかな違いを感覚的にキャッチする。つまり大勢が良いと感じるものは、何かしらの魅力を備えている可能性が高いのでしょう。

 ただ、絵画の評価は時代の有り様・好みの変化によって大きく変わるのでそこは注意が必要です。

 たとえばアール・ヌーヴォーの代表的な芸術家であるアルフォンス・ミュシャは、今では不動の人気を誇っていますが、それほど人気がなかった時代もあったりと。