聖書に詳しくなくても宗教画を楽しめる
秋田 よく「私は聖書に詳しくないので宗教画がわかりません」という人がいますが、それは残念だと思う。そもそも当時のキリスト教の絵画は、聖書の内容をよくわかっていない人たちにも向けて描かれたもの。なので聖書を知らずに絵を見て感じた思いというのは、案外絵の狙いに近いかもしれないんですよ。それに聖書を知らなくても楽しめる要素は沢山あります。いつも赤ちゃんを抱っこしている人がいるなとか、髑髏があるな、といった発見もできる。だから「わからなくても、ちょっと見てみようかな」で始めてもいいと思う。そして「怖いな」とか「気持ち悪い」と感じたなら、それでもいいんです。これは宗教画に限ったことではありません。ただ、自分はどう感じ、何を思ったのかを誰かに伝えたり、疑問に思ったことを調べたりすると、その先に進めて、絵画は一層面白く見られるようになると思います。
堀田 そんなときに秋田さんの本が役立つ。
秋田 はい(笑)。でもそれは知識がないと絵画は楽しめないという意味ではないんです。絵を見て何を思うかは自由だし、自分の感覚を大事にしてほしい。そして「どうしてそう思ったのか」をスタートラインにしてほしい。
堀田 そこからまた見えてくるものがありますよね。
撮影協力:UNITÉ(東京都三鷹市)
ほったきか/文芸家(詩歌・翻訳・書評)、俳誌「楽園」主宰、歌誌「短歌」同人、「NHK俳句」選者。俳句により芸術選奨文部科学大臣新人賞、現代俳句協会賞等、短歌により石川啄木賞等、受賞多数。著書に『俳句ミーツ短歌』(笠間書院)など。
あきたまさこ/美術史研究家。岡山県岡山市生まれ。2002年テキサス大学オースティン校美術史学科修士課程修了(MA)。著書『絵を見る技術』は累計10万部突破のベストセラーに。最新刊は『なぜ、これが名画なの?』(共に朝日出版社)。
対談に登場した俳句
白げしにはねもぐ蝶の形見哉 芭蕉
雀の子そこのけそこのけお馬が通る 小林一茶
夏草に汽罐車の車輪来て止る 山口誓子
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡辺白泉
戦争と戦争の間の朧かな 堀田季何
息白く唄ふガス室までの距離 堀田季何
片陰にゐて処刑台より見らる 堀田季何
引用・参考文献:山口誓子句集『黄旗』、中村草田男句集『火の鳥』、現代俳句協会編『昭和俳句作品年表 戦前・戦中篇』
※1 Hawley-Dolan, A., & Winner, E. (2011). Seeing the Mind Behind the Art :People Can Distinguish Abstract Expressionist Paintings From Highly Similar Paintings by Children,Chimps,Monkeys,and Elephants Psychological Science, 22(4)



