社会からこぼれ落ちてしまった悲しみ
空腹は感じるが、何かを食べたいという欲求が消失した。心配した妻が用意してくれた軽食を口に運んでも、無機質な固形物がのどを通っていくだけで、美味しいという感覚がない。同時に、外に出かけたいという気持ちもなくなった。私は、家で一日中横になって寝ていた。
平日の朝、まだ幼い長女が私に声をかけてくれる。きっと妻が、そうするように促したのだろう。
「パパ、だいじょうぶ?」
「うん、大丈夫だよ」
できるだけ明るい声で言う。
布団の中で天井を見上げていると、時折、不意に涙がこぼれる。自分が社会からこぼれ落ちてしまったという事実に涙が出る。
1カ月の休職期間はあっという間にすぎた。起きる気力もなく、朝から晩までごろごろと布団ですごした。
1カ月半がすぎるころ、ようやく外に出てみたいという意欲が湧いてきた。医師からも「短時間でもいいから、外の空気に触れてみて」と勧められ、近所の散歩から始めた。
体力が少し戻ってきたところで、私は次のステップに進んだ。地元の公立図書館へ“出勤”することにしたのだ。
私は図書館の片隅にある、税務署のデスクに似た事務椅子を選んで座った。最初は30分座っているだけで背中が痛み、これまでよく一日中座り続けることができたものだと驚いた。
こんな調子だったから、1カ月の休職はさらに1カ月延び、その後もう1カ月延長された。当初1カ月で復帰する予定だったが、結局3カ月にわたって仕事を休むことになった。