「残念ですが…」
「残念ですが、うつ病が再発しています。とりあえず1カ月休職してください。薬を処方し、診断書もすぐ書きます」
診察は5分もかからなかった。最初の診察時には細こまごました項目のストレスチェック表への記入や30分以上の問診があったが、そういったことは何もない。
うつ病を再発させる患者は多く、医師にしてみたら“即決”だったのだろう。
やはり再発だ。またかよ……。自分自身に落胆していた。このときのショックは1回目のうつ病の診断時よりもはるかに大きかった。
この先も自分の人生は「再発」→「復帰」→「再発」→「復帰」と無限ループを繰り返すのではないか。これは努力とか根性とかではどうにもならない。どう対処したらいいのかわからない。そのことが大きな絶望感だった。そもそも国税局に入ったこと自体が誤りだったのではないか。そんなことまで考えた。将来が完全に閉ざされた気がした。
前任のT税務署時代、同僚に1年以上、休職している職員がいた。
50代の広瀬さんは大学卒業後、国税局に入り税務署勤務一筋の男性で、実直で責任感が強かった。T税務署に勤めたのは私より1年先だったから、私が赴任した折にもあれこれと親身にアドバイスしてくれた。
広瀬さんはあるとき、突然うつ病で休職することになった。数カ月休んだあと、専門医から復職の許可を得て「お試し出勤」として半日勤務からスタートし、2週間続けたあと正式に復職した。ところが、またすぐ体調を崩し休職となった。
「たいへんだな」と思ったものの、どこか遠い出来事で、自分には関係のない話として片付けていた。結局、広瀬さんはそのまま休職を続け、私がT税務署からR税務署に異動するまで復帰することはなかった。
空席になったままの広瀬さんのデスクを思い出した。あのとき他人事のように眺めていた光景の中に、今度は自分が入り込んでいく。私は逃げ場のない不安に包まれていった。