バラバラになった親子用自転車

 シャッターを閉めると外部と遮断される構造だ。倉庫の照明は頼りなく、長居するような場所ではない。松永が物置のスペースに近づき、「これですね」と言った。工具のような物の横に、一メートル以上の物体があった。「どうしますか」と聞かれた私は、あえて淡々と「見せてくれますか」と依頼した。

 いびつな物体は、銀色のカバーの上から、形崩れせぬよう紐で何重にも縛られていた。松永ひとりで開けるのは難儀だったため、私も手伝った。カバーの隙間から自転車の車輪が見えた。

 バラバラになった親子用自転車だった。松永と私で、左から前部、後部、チャイルドシートの順番で壁に立てかけた。私はチャイルドシートだけは触ることができなかった。

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 元来、自転車の前部と後部は太いアルミ製のフレーム一本で繫がっていた。そのフレームは、ペダル部分と頑丈に溶接されていたが、その部分が完全に破断し、自転車は真っ二つに分かれていた。チェーンのカバーがひどく歪み、サドルやペダルも激しく破損し、凄まじい衝撃を受けたことが容易に想像できた。事実、前部と後部は互いに約二五メートル離れた場所に落ちていた。

 事故後に自転車を初めてじっくりと見た松永は、「頭でわかっていても、受け入れ難い」と唇を震わせた。松永は外出のたびに莉子ちゃんを抱きかかえ、チャイルドシートに座らせていた。

「ここに乗るときはいつも楽しいことが待っていたから。『おとうさん』っていう嬉しそうな顔しか思い出せない」