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「せめて痛みを感じないで…」
莉子ちゃんに「きょう、どこ行くの?」と聞くと、手をばたつかせながら「あすかまやこうえん、いくの」と嬉しそうに答えていた。北区の飛鳥山公園のことだ。
チャイルドシートのシートベルトが切れていた。事故の衝撃なのか、救急隊が切断したのかはわからない。プラスチック製の足置きの左足部分も吹き飛ばされていた。松永はチャイルドシートに縋るように泣き崩れた。
「あんなに小さい体にこんな衝撃が、せめて痛みを感じないで逝ってくれてたらいいな」
車と衝突後、真菜さんと莉子ちゃんの二人は離れ離れになった。
「真菜が空中で意識があったとしたら、莉子の無事を祈っていたんじゃないかと思うと……」
声が上ずり、言葉は続かなかった。
真菜さんは交通ルールに厳しく、莉子ちゃんも理解していた。
真菜さんが家の近くを歩く莉子ちゃんを撮影した動画がある。二人は横断歩道にさしかかる。青信号だったが、真菜さんは「左右を確認しようね。よし! 手を挙げて行こう」と呼びかける。
育児日記には、別の日のやりとりが書かれていた。路上で莉子ちゃんが「おかあさん、車に気をつけてね」と言い、車が通過後に「もういないから大丈夫よ、おかあさん」と声をかけていた。
