高校駅伝全国優勝を目指す女子高生たちの青春を描き、松本清張賞を受賞した『ひなたの中継点』刊行を記念して、これがデビュー作となる森山世衣さんと清張賞の先輩・額賀澪さんの対談が実現!

 前編では、お互いの小説の共通点である「駅伝」を語り尽くします。

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パーティーの最中にプルーフを読みはじめ……

額賀 今年の松本清張賞の最終候補が発表されたとき、『ひなたの中継点』というタイトルを見て、「これは絶対に駅伝の話だ!」と思ったんです。受賞が決まったあとにあらすじを読んでみたら、やっぱり駅伝の話だったので、実際に読めるのをめちゃくちゃ楽しみにしていました。

森山 本当ですか、嬉しいです。

額賀 贈呈式で文春の編集者さんからプルーフ(見本の冊子)をもらえて、楽しみすぎてパーティーの最中に冒頭を読み始めてしまったんです。私も駅伝やマラソンを見るのが大好きで、小説にも書いたことがあるので、競技シーンを書く楽しさも難しさも分かります。だからこそ、いろいろな苦労や工夫が見えました。スピーチで森山さんご自身が走る方だと仰っていましたけど、体内の血や熱の巡りに注目して書いているのが伝わってきて、走る人だからこそ書ける文章だなという印象が強く残りましたね。私はまったくスポーツをしないので、やっぱり書き方が変わるんだなと読んでいて思いました。

森山世衣さん(左)と額賀澪さん

森山 そうなんですね。

額賀 ミステリが絡んでいるのもいいですよね。今の時代、“スポーツ”や“青春”だけでデビューしてしまうと、その先が意外と苦しいかもしれない。そこにミステリ的な仕掛けを組み込めるというのを、デビュー作で見せておくのは、すごく大事だと思います。

森山 『ひなたの中継点』がミステリとして通用するのか不安で、帯に“ミステリ”とうたって大丈夫なのかドキドキしていたくらいなのですが……。

額賀 何と言われようと遠慮なく付けたほうがいいですよ。デビュー作は作家の名刺代わりですから。編集者たちが、「この人はこういうものも書けるかもしれない」と想像する余地はできるだけ広げておいたほうがいい。

 もしかしたら、SNSのコメントやネット書店のレビューでミステリ部分について厳しい意見が届くかもしれないですけど、気にする必要はないと思います。これは「ある」ことが重要なので。

森山 「ある」ことが重要……。なるほど、ちょっと自信がつきました(笑)。